PPAPなコンピュータの世界

1999年に新卒で社会人になって以来、
仕事でコンピュータを使うのが当たり前というか、
IT業界でデスクワークなので
打ち合わせと移動の時間以外はずっとコンピュータに向かっていることになる。
コロナ禍でリモートワークがメインとなって、劇的に職場環境というものが変わった。
ZOOM や teams のオンライン会議が当たり前になって、
teams には Box や outlook など microsoft 製品がどんどん統合されて行ってる。
便利になっていく。
その一方で進化なのか退化なのかよくわからないことも時としてある。
 
僕は基本として客先常駐という扱いとなっていて
自社にPCは持たず、顧客から貸与されたノートPCを自宅に持ち帰って
そのノートPCを顧客のネットワークにつないで日々仕事をしている。
自社のネットワークにつなぎたいときは
この顧客貸与PCからさらにリモートデスクトップ接続のようにしてつないでいる。
(そのせいか極端に遅くなってかなり忍耐力が鍛えられる。
 電話した相手がさらに別の電話に出ていて、その先の人と話すかのよう)
ノートPCが自社のと客先のと2台あって使い分ける、というわけではない。
全て1台で済むというのは便利と言えば便利だけど、いろいろと制約が多い。
 
例えば、自社につないで自社の環境にあるファイルを
客先の環境に持ってくるというとき、
同じ1台のノートPC上で操作しているのだからひょいとドラッグ&ドロップするだけ
……というわけにはいかない。
物理的には同じモニター、同じキーボードにマウスだとしても
理論上は別々に存在するコンピュータなので切り離されている。
よってわざわざ自社のメールアドレスから客先のメールアドレスへと
メールに添付ファイルをつけるという形で送らないといけない。
パスワード付きの圧縮ファイルにして。パスワードのメールは別途送る。
逆もまた然り。なんかあほらしい。かなりあほらしい。
 
このパスワード付きの圧縮ファイルを添付したメールと
そのパスワードのメールを別に送ることでファイルをやり取りするやり方を
PPAP」と呼ぶ。
(この名前、実はピコ太郎に由来する)
10年ぐらい前から広まりだしたのだろうか? いつだろう?
これ意味あるのかなー、あほらしいなー、
同じネットワーク、同じメールサーバでパスワード送ったら
悪意のあるハッカーはいくらでも覗けるんじゃないか。
でもまあ皆そうしてるしと思いながら続けていたら
なんと、この方式でやりとりしてるの日本だけ、ということを昨年ぐらいに知った。
政府も今年から禁止の方向へ。
それを受けて客先でも利用禁止となり、
年明けから添付ファイルのついたメールが届いたら有無を言わさず
メールサーバの方で添付ファイルを削除することになった。
 
そんなわけで、今日から自社と客先でファイルの転送が必要になったら
クラウド上のストレージとして Box を使うようにした。
 PPAP よりはましだけど、めんどくさいことは変わらず。
客先のメールアドレスと自社のメールアドレスでログインして
まるで別人のように振舞い合う。
 
そもそもの話、一人の人が
自社の環境に接続するアカウント、メールアドレス
客先の環境に接続するアカウント、メールアドレス
を別々に持っているというのが、よくよく考えるとなんか変な話で。
10年後の世界は生体認証技術の進化などあれこれを受けて
一人の人間がインターネットに接続するためのアカウントは一つきり、
そのアカウントで会社も自宅もその他の環境もログインできる。
そんな世の中になるんじゃないか、と僕は考える。
サイトごとにアカウントとパスワードが異なっていて覚えきれない、
付箋に書いて貼っておくというのもなくなる。
パスワード管理ツールというのも過渡期の存在で、ゆくゆくはなくなるだろう。