今日か明日と「大学入学共通テスト」か。
僕らの頃は「大学入試センター試験」だった。
科目や配点が変わったのだろうか。
というか、今思うと「センター」ってなんだったんだろう。
皆ひとつに集まるって意味だったのか。
そういうセンターが都内のどこかにあったのか。
出題、採点、集計センターみたいなのが。
古ぼけた大学の講堂のような建物の中で
巨大電算機がウインウイン回ってるようなのが。
それが全国から送られてきた大量のマークシートを次から次に飲み込んで
カクカクしたグラフのようなものを吐き出す。
全受験生の各科目の得点を延々とアウトプットする。
それを大勢のセンター員が学校ごとに切り取って封筒に詰めてポストに投函する。
眼鏡をかけて灰色のベストを着て黒い腕カバーをした職員たちが黙々と。
(そういえば僕のセンター試験の結果って個人宛に届いたのか、
学校に送られてきたのを受け取ったのかよく思い出せず)
受験生にとっては恐怖のセンターだな。
受験戦争、受験地獄に疲れ果て、血迷って爆破予告しようとする学生もいただろう。
詰襟の学生服を着て鉢巻をして、血走った眼で声明文を切り貼りする。
「四当五落」などと多書きしたのが壁に貼られていて、机の上にはボロボロになった赤本。
しかし、ようやくシステムの切り替えが済んで
インターネットであれこれできるようになって
巨大なセンターに回答用紙の束を送る必要がなくなったので
「大学入学共通テスト」に移行することを決めたのだろう。
廃止されたセンターは今も都内のどこかにあって
高い塀と有刺鉄線に囲まれて草ぼうぼうの敷地の中に廃墟が眠っている。
窓が割れたままになっていて入り口には大きな、錆びたカンヌキ。
巨大電算機は電源が落とされ、
取り込み終えたマークシートを詰めた段ボールの山には
「1993年青森」などとラベルが貼られ、
その中に僕の回答用紙も紛れ込んでいるだろう。
今となってはその段ボールも崩れ、マークシートの山が床に散らばり、
ネズミたちが走り回っているかもしれない。
その無数の用済みの紙切れたちの中に受験戦争の勝者と敗者がいた。
センター試験とはたぶん、そういうものだったのだろう。