先週買ったCD #68:2022/01/24-2022/01/30

2022/01/24: tower.jp
Tom Misch 「Quarantine Sessions」 \2200
Aurora 「The Gods We Can Touch」 \2750
 
2022/01/24: www.amazon.co.jp
The Sugarcubes 「Life's Too Good」 \151
The Sugarcubes 「Here Today, Tomorrow Next Week」 \580
 
2022/01/26: カケハシレコード
The Sugarcubes 「Life's Too Good」 \290
※先日買ったのが解説・歌詞なしだったため買い直し
 
2022/01/26: www.amazon.co.jp
(V.A.) 「From The Kitchen Archives No.3 Amplified: New Music Meets Rock, 1981-1986」 \963
 
2022/01/28: diskunion.net
Francoise Hardy 「Message Personnel」 \1100
Dolly Mixture 「Dreamism!」 \980
※先日買ったのが帯が切れていたのに気づかず、だったため買い直し
 
2022/01/29: BOOKOFF 国立駅南口店
Eric Clapton 「Ballads」 \393
 
2022/01/29: diskunion.net
Tei Towa 「Motivation Five」 \480
Shakatak 「City Rhythm」 \2250
 
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The Sugarcubes 「Life's Too Good」
 
The Sugarcubes はまだ世界的には無名だったころのビョーク
ヴォーカルとして参加していたアイスランドのバンドで、
このアルバムはその1作目に当たる。 
イギリスのインディー・レーベル『One Little Indian Records』と契約し、
1988年、日本でも発売された。
 
高校時代、青森駅前のアーケードの商店街の横、
当時『カネ長』だったデパートの脇の雑居ビルに入っていた
CDレンタル『友&愛』でたまたま見かけて、
妙に引っかかるものがあって予備知識なしに借りてみた。
その時一緒に借りたのが同じくジャケ借りの 
Psychedelic Furs のベストだった。
乏しい小遣いでレンタルできるのも月数枚という中で
自分にとってはかなりの冒険だった。
どちらも大当たり。
あの頃が自分の嗅覚が最もさえていた頃だと思う。
ダビングしたテープを繰り返し繰り返し聞いた。
 
社会人になって1年目のある時、
「Life's Too Good」の中古を荻窪ブックオフにて
数百円で投げ売りされているのを見つけて買うも、
擦り傷有で音が飛んで終わりの方を聞くことができず。
同期の友人にそのことを話したら
”Birthday” を聞き直したいのでそれでもいいからほしい、
ということになって次の日渡した。
 
以来ずっとCDでは持っていなかった。
先日聞き返したくなって amazon で151円というのを見つけてオーダー。
しかし、届いた中古は帯はあっても歌詞・解説無し。
帯には記載があるのに商品の状態を確認してないんだろうな。
商品説明にちゃんと書けよ! と腹が立ったが、この値段なら致し方なし。
こういうこともある。
 
諦めてまた探すも、その後見つからず。
ビョーク人気が高まって1988年以後何度か国内盤が再発されるも、
1997年の再発以後は8曲の大盤振る舞いだったボーナストラックがカットされている。
どうせ買うなら古い規格であってもそちらの方がいい。
amazon にも HMV にも ヤフオクにもない。
ブックオフオンラインにはありそうなんだけど
帯や解説があるのかといった情報が載っていない。
 
最後の最後、頼みの綱のカケハシ・レコードを見てみたら、あった。
291円。さすがだなあ。
ちゃんと帯付きかどうかや、盤のコンディションについての記載もあった。
1997年のボートラ無しのだけど、ま、いいかと思ってしまった。
埼玉県寄居市のネットCDショップで、若いスタッフばかりと思われるのに
なぜか専門はプログレや60年代、70年代のマニアックなロック。
CDをオーダーするとスタッフのつぶやきや
レコメンドを載せたニュースレターが同封されていて楽しい。
がんばってるなあとこちらもうれしくなる。
10周年の時だったかな、記念の小冊子もいただいた。
それはさておき。
最初に買ったボートラあり、解説無しの方で iTunes に取り込んで売ることにし、
カケハシ・レコードで買った方を手元に残すことにした。
 
今とは違って、1988年のあの頃の The Sugarcubes
アイスランドから突如現れた珍獣という扱いだった。
そもそも北欧にロックがあるというのを認識している人が少なかったと思う。
1980年代にワールド・ミュージックが流行っても
アフリカや中東、ラテンアメリカばかりで。
渋谷系の盛り上がりと共にスウェディッシュ・ポップとして
The CardigansCloudberry Jam が人気になるのも
90年代も半ばになってから。
北欧に意識が向いていたのはブラックメタルの動向を追ってた人ぐらい?
あと北欧ジャズか。
 
カラフルな音で、躍動感というか生命力が尋常じゃない。
ビョークの歌い方は今と変わらず独特な浮遊感があって癖になる。
この時点で未知の生き物っぷりをいかんなく発揮。
もう一人の男性ヴォーカル、アイナ―も素っ頓狂な存在感があった。
(解説を読んだらアイナ―はアイスランドの大学の講師、
 メンバーの二人も詩人として活動していたとあった。
 アイスランドサブカルチャー・オールスターズだったのかもしれない)
 
シングルになった ”Birthday” は今聞いても出色の出来。
この時期の The Sugarcubes だけが生み出せる化学反応というか
他にはない、独特な雰囲気。
この1曲だけでも後世に語り継がれると思う。
無重力と重力の境目のギリギリのところにあって無限に落下し続けるかのような。
ビョークのこの世に足のついていないような浮遊感を最大限にまとった曲。
ボーナストラックの ”Cowboy” や ”Dragon” もここでしか聞けない
若さゆえの無鉄砲でやんちゃな曲。本編よりもいいなあ。
 
The Sugarcubes は3枚のアルバムと
1枚のリミックス集、1枚のベストを残して解散。
結局は ”Birthday” と1作目「Life's Too Good」を超えることができなかった。
今聞くとリミックス集「It’s It」が面白い。
808 State のグラハム・マッセイなんかがミックスしてて。
ここが後のビョークのソロにつながっていくんだろうな。
 
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Aurora 「The Gods We Can Touch」
 
オーロラはノルウェー
エレクトロニック・ポップ系シンガーソングライターとでも呼ぶべきか。
3作目のアルバムとなる。
2012年に10代半ばでデビューして今年10年目。まだ26歳であるという。
 
2年前かな、NHK BSで『ドキュランドへようこそ』という
海外の秀逸なドキュメンタリーを紹介する番組があって
たまたま見たのが『オーロラ 私の歌を探して』の回。
 
神経質そうな女の子がスタジオの壁を叩いて音を出し、
その細かな違いを探っていたのが冒頭のシーンだった。
こ、この子はなんだ?? とすぐ引き込まれてしまった。
それまでオーロラのことは全く知らなかった。
 
見終わった次の日、こんなことを書いていた:
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高校の頃、歌っているところを撮影した動画を友達がアップしたのが注目を浴び、
一夜にしてポップスターとなる。
2016年に最初のアルバムを発表。
ドキュメンタリーはその後の姿を追っていた。
2017年にアルバムを製作するもオーロラはセルフ・プロデュースを主張、
しかし周りの大人たちはこれでは売れないという。オーロラ20歳の頃。
2018年、フランスで再開したレコーディングが形になって
ようやくEPとアルバムとして発表される。
その葛藤、苦悩、不安の日々を感覚的な編集、スタイリッシュな映像で紡いでいく。
半分ぐらいはイギリスやブラジルなど世界各地で行われたツアーの日々。
バックステージでは熱狂的なファンがオーロラを一目見ようと待ち構えている。
 
天使のような無垢の声は儚さと力強さとを兼ね備えていて、
その顔は、身体は、繊細さの塊。天才の存在感を放っていた。
音に迫るときの目つきが違う。
求めるものは捕まえようとすると手のひらの間からすり抜けてゆく。
しかし、求め続けないといけない。
安らぎのひと時が訪れることはない。
どんな一瞬一瞬も一人きりでこの世界と対峙し続けている。
 
音楽的な能力の高さゆえにこの世界とコミュニケートする手段に悩む、
異形の自分に悩む、という意味ではシーアに近いと思う。
あるいは、僕が最近知った中で同じぐらい才能を感じたアグネス・オベルか。
デンマークなので同じく北欧だけど、アグネス・オベルの方がアカデミックというか、
あえて誤解を生むような言い方をすればクラシック的か。
オーロラはエレクトロ寄りとなる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
その後すぐ、アルバムを入手しようと探すも
このドキュメンタリーで取り上げられていたふたつの作品のうち、
2019年の11曲入りのアルバム「A Different Kind of Human (Step 2)」は
CDですぐ買えたものの
2018年の8曲入りEP「Infections of a Different Kind (Step 1)」
CDがワールドワイドで発売されなかったようで全然見つからない。
しかし、この作品の ”Queendom” など
ドキュメンタリーの中で印象的だった曲はこちらなんですよね。
YouTubeで何度も聞いていたら居ても立っても居られなくなって
遂に、セカイモンで購入。
商品そのものの価格は \3921 だったけど、
しかしここに海外からの輸送料や関税がかかって倍近くになる。
高い買い物になってしまったが致し方なし……
……と思っていたらその数か月後、この2作を1枚に収めた国内盤が出た!!
やられた。どうして僕はあともう少し我慢できなかったのか。
 
今回の「The Gods We Can Touch」は発売されてもちろんすぐ買った。
解説を読むとここで言う神々とはオーディンといった北欧の神々ではなく
ギリシャ神話の神々であって、
収録された15曲はそれぞれアルテミスやプロメテウスなど
そのイメージに基づいて書かれたのだという。
Cocteau Twins1984年のアルバム「Treasure」に近いものを感じる。
崇高で神秘的なものが現世に下りてきたような。
あのアルバムにも ”Persephone” や ”Pandra” といった曲があった。
 
彼女自身の成熟もあってより深みのある音になった。
アコーディオンが印象的に使われる曲であるとか
エレクトロと生楽器の境目もより滑らかなものになった。
若さゆえの若干の賑やかさは消え失せて、より深い森に分け入っていく。
彼女の声とこの世界の音が響き合う、永遠に続く森。
 
この世ならぬものを描く、
とてつもなく美しい迷宮世界。
このアルバム、今年を代表する一枚になるんじゃないか。