養老渓谷の温泉へ その3

(27日、日曜日の続き。温泉宿を出てから)
 
山道を南に10kmほど行った先に「勝浦ダム」があるという。
去年奥多摩湖で見て以来、あちこちのダムを見てみたいと思う。
しかしナビで検索しても「勝浦ダム」が出てこない。
iPhonegoogle で別名を調べてもナビでヒットしない。
仕方なく iPhonegoogle map を見ながら進んでいく。
とは言ってもほぼ一本道。迷うことはなかった。
途中、木が全て伐採されて丸坊主になったかのような小さな山をいくつか通りすぎた。
道沿いに家はポツンポツンとあるだけ。集落と言えるほどのものではない。
鄙びた養老川を渡る。
 
ダムに続く坂道を上っていく。
入り口は特に進入禁止というわけではなかった。
幟って行くと一人で来ているライダーが二組と車が一台。
ダムがあってせき止められて湖になっている。
その向こうに森や林があるだけの何もない風景。
観光向けの施設もなく、地図や標識の類も立っていない。
ただ、ダムがダムとしてある。
生活に必要だからつくられた、というような。
こういうそっけないダムが全国に何十、何百とあるのだろう。
脇に何らかの管理施設があったが、日曜だからかこの日は閉じられていた。ひと気がない。
その向こうはロープが張ってあって立ち入り禁止となっていた。
 
坂道を下りて、引き返さずに勝浦方面に進んでいく。
海辺は通らずにまた内陸を。
もうひとつ妻が気になって行ってみたいという「ポッポの丘」を目指す。
北へ、いすみ市にあるという。
勝浦エリアに入ると内陸の方でもリゾートっぽい雰囲気が出てきた。
南国っぽい木々に観光客向けの飲食店であるとか。
キャンプ場の看板やゴルフ場の案内も増えてくる。
国道を行くうちにいすみ鉄道の線路が並行するようになった。
 
途中、大多喜町で大きな道の駅を見つけて寄っていく。
入口に鎮座する牛の像にマスクがかけられている。
鉢に入ったメダカを売っていた。
わさび菜、菜の花、クレソン、春菊、唐辛子、マッシュルーム、蓮根と
野菜をたくさん買い込んだ。
他、千切りかまぼこやこんにゃくの煮物といった酒のつまみなど。
 
いすみ市が米どころだからか、周りに農家が増えてくる。
13時前に「ポッポの丘」に着いた。
崖に沿ってオレンジや青の車両が並んでいる。坂を上っていく。
入園料は0円だが、駐車場代は1,000円という仕組み。
窓口のおじいさんに支払う。
近くに住む子供たちが歩いてきて遊ぶ分にはタダということか。
気が利いていると思う。
 
いくつかの鉄道車両保存会の協力で成り立っているようだ。
駐車場のスペースの周りに車両が並んでいる。
いすみ鉄道銚子電鉄千葉都市モノレールなどで利用され、役目を終えた車両。
その多くは中に入ることができる。
ある車両には保存会の会員のコレクションというか私物なのか、
鉄道の写真集や時刻表、「鉄道ファン」や「鉄道ジャーナル」といった雑誌など。
ものによっては色褪せてボロボロになっている。
ある車両には芸能人が訪れたときの写真や
ここに設置されている車両がトレーラーで運ばれてきたときの写真など。
丸ノ内線のかなり古い車両もあったなあ。真っ赤の。
何代前に当たるのか僕も乗ったことがない。昭和の時代なのか。
車両によっては計器とレバーでみっしりした運転席に座れるものもあったし、
丸ノ内線は警笛を鳴らすことができて子供たちがひっきりなしに鳴らしていた。
 
3両か4両つないだトロッコ列車もあった。
中には石炭ストーブが設置されている。
ひとつひとつの車両が短いのでギャラリーのようになっていて、
ある車両は松本零士先生がサインした『銀河鉄道999』のイラストを飾っている。
ある車両は平和を願ってか、写真家がアフガニスタンを写したものとなっていた。
 
オーナーは養鶏業を営んでいたようで
ここのカフェというか売店で卵かけご飯を食べることができる。
いすみの米だからうまいに決まっている。
妻は卵かけご飯、僕は牛丼に生卵付きにした。
トレイを持ち込み、車両の中で座って食べることができる。
正直、牛丼は手作りではなくレトルトだと思う。
でもご飯と生卵がうまいのでその辺の牛丼屋で食べるよりもおいしかった。
この生卵を売っている車両もあってパックに詰めて買って帰った。
 
さらに丘を登っていくとブルートレインとそれをけん引するディーゼル車が。
中に入ることができた!
そうだよ、こうだったなあ!!
青森から上京するときはいつも寝台特急だった。
ああ、あのシートのゴワゴワとしてくすんだ感じ。
カプセルのようになって壁には小さな細長い窓が。
開閉することができて夜中そっと開けて真っ暗な外の風景を眺める。
ベッドは2段で僕はいつも上の方を望んでいたなあ。
グラグラする梯子を上っていく。それだけでかなりワクワクした。
 
丘を下る。子供たちが遊具で遊んでいる。
手作り感満載の施設。でもB級と呼ぶのはちょっと違う。
拙いけど愛がある。鉄道への、地元への。
そういう場所だった。
鉄道ファンにはたまらないだろうなあ。
経営が立ち行かなくなってこれらの車両を
廃棄、スクラップへということがないように願う。
 
後は帰るだけ。
千葉駅~ディズニーランド周辺は渋滞に巻き込まれそうなので
迂回するために誉田、四街道方面に出た。
四街道のセブンイレブンで休憩してアイスを買う。
四街道から高速に乗って帰ってきた。
遠回りにはなったけど渋滞には遭わず。
17時半には家に着いた。
疲れて、風呂を沸かして入った。
夜は道の駅で買った「腰古井」のワンカップを飲んだ。