湯楽城のこと

昨日の「富里スイカロードレース」のあと。
近くに温泉があるので入りに行こう、という話になった。
それぞれの車に乗って移動する。
「湯楽城」という。
車を停めていたスーパーからは 2km ほどの距離ですぐ。
広大な敷地にホテルがあって、その一角に温泉施設。
これがまた大きい。前面に噴水。正面玄関から左右に50mぐらいずつ続いているか。
一方で建物2階に飾られた何十もの浮世絵は白く色あせている。
なんだろう。元々はとてつもなく古いところなのか。
少し離れた駐車場に停めて戻って来る。
 
エントランスホールが無茶苦茶広い。
2階分ぐらいの高さがあってシャンデリアも釣り下がってなんともヨーロッパの社交場的な。
いきなりなんだこのゴージャスさは??
1人車が遅れて、迷っているという。ナビの指示通りに進んだら豪農の畑の中に出たと。
1人は着くことは着いたものの、最初ナビは区役所を表示したという。
富里市で区役所? 化かされてるのか? ここ、大丈夫なのか? と怖くなってくる。
中の雰囲気は江戸の町並みを意識していて、韓国風のアカスリもあるという。
なんだろう、この全世界折衷感。
 
館内着に着替えると真っ暗な通路を足首までの足湯がヒタヒタとあって歩いていくという趣向。
異世界への橋渡しということか。
向こう側に出ると江戸というか……
お台場の大江戸温泉物語を水で薄めて広い場所に放り込んだような。
な、なんだここ。
中途半端にゴージャス、ではなくゴージャスな中途半端。
ステージがあって、神社があって、卓球台やビリヤードの台があって、
畳敷きの大広間にはフードコートとなっていた。
天上には縦長の川のように長いモニターが花の映像などを流していた。
 
一方で温泉は悪くなかった。
エントランスホールがああなのでライオンの口からお湯が出るとかを想像するが、そういうのは全くなし。
いたって普通の温泉施設だった。
広いのにお客さんは少なく、これ、穴場じゃないか。
露天風呂はきれいで、面した3種類のつぼ湯は男性がゆったり入ることのできるサイズ。
そのうちのひとつは足が延ばせるぐらい大きかった。
中の低温風呂もよかったなあ。
38℃でぬるいけどサウナの後、熱めの風呂の後にちょうど良かった。
なんだここ、気に竹を接いでばかりのちぐはぐなコンセプトばかりだけど、風呂はまともだな。
空いていて居心地いいし、近くだったらまた来たいな。
露天風呂脇の寝椅子に横になって風に吹かれながらしばらく転寝した。
 
風呂から出て15時。
僕が最初だったので大広間の席を確保する。
最近ありがちな各席にタブレットを置いて注文すると店員が届けてくれるというスタイルではなく
フードコートの各店の入り口に設置されたタブレットを操作して注文し、発券されると
各店にそれを持っていくという。あとはセルフサービス。
お金のかけるところがなんか違う。
しかし、中華メニューが充実していたので試しに頼んでみた麻婆豆腐が案外うまかった。
残り4名もそれぞれに上がってきてオーダーする。
妻の頼んだ親子丼、僕が追加で頼んで中華焼きそばもうまかった。
館内全体が大味なのに、ところどころ普通によくできている。
なんかもうよくわからず。
 
大広間の席のいくつかは着飾った若い女性たちが陣取っている。
僕らみたいに館内着を着ることなく、風呂に入りに行くそぶりも見せず、
飲んだり食べたりもしない。
ステージに面したいくつかのテーブルに分かれて彼女たち自身には交流はないようだ。
ある一組は鞄から取り出したフィギュアやアクセサリーを取り出して
大広間のテーブルの上で撮影を始めた。
 
謎が解けたのは17時のショータイムが始まってから。
彼女たちは大広間の端に一直線になって並びステージにかぶりつきになる。
ステージには和太鼓がずらっと波のように並ぶ。
一組は地元の演奏家集団なのか、年配の男性とその若い弟子二人による演奏。
これがなかなかよかった。躍動感があり、迫力がある。
途中パートチェンジがあって若いのが鉄筋? グロッケンシュピール? を。
ずっと聞いていたいと思うが、残念ながら10分ほどで終わり。
 
2組目が彼女たちのお目当てだったようで、男性5人組のアイドルグループ。
天正遣欧使節の少年たちがヨーロッパから帰ってきたというような風情の黒を基本にした衣装。
ボーカル担当が入れ替わりつつ、センスを広げたり閉じたりしながら歌う。
女の子たちはそれぞれスマホで動画を撮影。
ジャニーズではないだろう。地下アイドルの青田買いでおっかけ??
彼らが3曲歌って袖に下がると撮影は終わった。
トイレに行ったときにふと見るとメンバーたちは5人ともステージ裏の壁に並んで体育座りでうなだれていた。
よほど疲れたのか。
 
3組目は刀を使った演舞パフォーマンス。ドラマチックな曲に合わせてストーリーのある殺陣を披露。
4人のうち1人は女性。
うーん、これは人前で見せるには技術的にまだまだのような……
しかも温泉ステージあるあるの音が飛んでやり直すとか。
見終わった後でこれどうかなあと話すと、妻の友人が彼らのことを調べていてハワイでも公演を行っているのだという。
日本の魅力をオールインワンに持っていけるからだろうか。
 
ステージが終わって精算をして18時に建物を出ると正面玄関の橋が通行止め。
名物のひとつ、噴水のショーが始まるという。
アニメの主題歌っぽい曲、ディズニーのなんかの主題歌、何の曲かはわからないが勇ましい曲、
3つの曲に合わせて一直線に並んだ何十もの噴水の噴射装置、これが縦横無尽に回転して
水流を調整しながら一糸乱れず上に横に噴射する。
シンクロナイズドスイミングのよう。
こんな機械があるんだな。なんかすごいものを見たな。
でも日本人が思うに、お金をかけるなら大広間に飲食注文用のタブレットが先だと思う。
正面玄関の橋の前で何十人ものアジア系観光客がショーを見ていた。
この時間に合わせて来たのか。
 
妻の友人曰く、調べてみたらこの横のホテルが中国系の企業に買収され、
その後2019年に新しくこの温泉施設がオープンしたのだと。
なるほどなあ、だから江戸のようで江戸ではない。
日本のようで日本でない。
世界各地がモザイクになったような不思議な空間が出来上がった。
かつ、中華系メニューはうまい。
中国色を前面に押し出さなかったのは中国系観光客を呼び込むためか。
本当は団体をバンバンこの広い施設に呼ぶつもりだったのだろう。
しかしコロナ禍でその目論見が外れた。そんなところかな。
 
いろいろバランスが悪いと思いつつ、じゃあここがダメかということはなく。
分かってて利用するならいいところはたくさんあると思う。
温泉そのものはシンプルでいいし。
また来年の富里スイカロードレースの後で来るのかな。
それもありだな。
今回のメンバーそれぞれにここの魅力を感じていた。
 
帰りも高速道路で。
予想通り幕張で渋滞に巻き込まれるが、それ以外は順調。
20時前には家に着いた。
荷物を片付けつつポツンと一軒家を見る。
妻が富里のスーパーで買ったシュークリームとカレーパンを食べた。