昨日、大学の映画サークルの先輩から連絡があって
別の先輩が小説家デビューを果たしたとことを教えてくれた。
とある新人賞を取ったという。
僕より3つか4つか上なので50代半ば。
僕が20代に小説家を目指して書いていた頃、先輩も書いていた。
ずっと書いていた。
そうか、やっぱ、書き続けることが大事なんだな。
この年になると、友達の友達ぐらいの、だけど直接的には知らない人が
小説家デビューを果たしてというのをちらほらと聞く。
そんなに割と身近で何人もデビューできるものなのか。
コツコツと書き続けてようやくという人もいれば
それまで無縁だったのがたまたま書き始めたら面白くなってという人もいるだろう。
僕はいつのまにかほぼ諦めてしまっていた。
書くことがなくなった。書きたいことがなくなった。
書きたいという意欲がなくなった。
何も書かないまま言葉を使い果たした。
井戸は枯れた。
才能が足りなかったが、
それ以上に努力が足りなかった。
50歳を超えて、僕は人生の負け組なんだな、ということを思う。
後悔はしてないし、どちらかと言えばこれまでの人生に満足している。
でも、負け組。
いろんなことが中途半端なまま、何もなさなかった。
普通の、人。
またいつか書こうと思う。
無数の選択肢の中から書きたいことはこれではない、というあれやこれやを
日々少しずつ減らしていって、最後何が残るのか。
今はただ、その寄る辺ない心細い作業を頭の中で続けているだけ。
何も残らないかもしれない。
途中であきらめるかもしれない。
記憶力の減退とともに、言葉を思い出す力も少しずつ失っているように思う。
応募する文芸誌の傾向と対策を探る気力もない。
残骸のまま、生きている。惰性で、生きている。
他の多くの人たちのように。
いや、一緒にするなと言われるのか。
まずは先輩の作品を読もう。
それが新しい力を生むかもしれない。