新宿駅地下街停電

日曜の新聞を見て知ってる人も多いと思うんだけど、土曜の昼新宿駅の地下街が停電になった。
そんなに長い間じゃなかったらしいんだけど、幸か不幸か僕はたまたまそこに居合わせた。
このことはやっぱ書いておきたい。


東口の改札を出て階段を下りて行って、
MY CITY の和菓子・洋菓子のフロアを通り過ぎて地下の通路に出る。
丸の内線の改札の前を歩いているときに
ヒューンと低く下がっていくような音がしたと思った瞬間、明かりが消えて真っ暗になった。
お?と僕は思う。
立ち止まって周りを見渡す。


すぐにも辺りは騒然とし始める。
パニック状態に陥ったのか、「キャー」と叫んでいる女の人の声を通路の奥の方で聞いた。
「ちょっとちょっと!何よ!!」とか。
不安に駆られたのか、赤ん坊がどこかで泣いている。
しばらくすると目が慣れてくる。
歩いている人たちのほとんどが立ち止まって、連れの人たちと話しているようだ。


地上の出口からわずかばかり光が漏れている。
多くの人たちは他の人にぶつからないようにしながら手近の出口へと移動していった。
JR や MY CITY は差し込む明かりの眩しさからして停電になってないようだったので、
そっちへ慌てて駆けていく人たちもいた。
携帯の小さな灯りを頼りに何かを読もうとする人がいたり、
なぜか荷物の整理のようなことをしている人がいた。
その場の状況を「どうなるのだろう?」と半ばワクワクしたような気持ちで
観察している僕のような人もちらほらといた。
そういう人のほとんどが携帯で誰かと話していた。
「すげーよ!オマエも見に来いよ!!ぜってーすげーよ!」とか
「お母さん、お母さん、聞こえる?お母さん!」だとか。
地上出口に出た人から聞いたのか
若者たちがわざわざ地下に降りてきて「ほんとだー」と驚いていた。


僕は西口方面に進んでいった。
地下20階の核シェルターに閉じ込められているような感じがした。
薄暗闇の中、避難民のような人たちばかりだった。
僕もまた避難民だった。タワレコの袋を持った避難民。
普段なら賑やかな地下街が落ち着きのない声しか聞こえてこない。
妙にムズ痒い感じがする。浮遊感というべきか。舞い上がったような。
プチ非常事態。
若者たちが「ここは俺たちのものだ!」と暴れだしたっておかしくはない。
(突如ポッカリと開いた穴に彼ら/彼女たちは自分たちだけの王国を見出す)


突然、背後からスピーカーごしの声が聞こえた。
「こちらは新宿駅東口交番です。ただ今新宿駅地下通路にて発生した停電につきまして・・・」
「現在のところ復旧の見通しは立っておりません」
「慌てず最寄の出口から地上に出るか、その場でじっとして動かないようにしてください」
「このような事態に乗じたスリにお気をつけください。不審な人物を見かけられましたら・・・」
同じように前方からも聞こえる。西口交番からだ。
西口は噴水のある広場の辺りが地上に向かって大きく吹き抜けているので十分明るかった。
その分混乱した雰囲気も少なかった。
イラク復興支援の募金と署名のため柱の陰に立っている人たちが戸惑っているぐらいだった。


「ふーん、こんなもんか」と急速に冷めていった僕はそのまま階段を上っていって地上に出た。
新宿の西口はいつも通りだった。
長距離バスの発着所ではたくさんの人たちが暇そうに階段に腰掛けていて、
相変わらずネオンの派手なヨドバシカメラは大きな音でポイントカードの宣伝をしていた。
振り返るってみとこれまでの出来事が何もなかったような感じがした。


・・・こういうことってあるんだなー。
上京してもう11年になるが、こんなの初めてだ。
珍しい体験ができて僕としてはムフフな感じ。
デジカメを普段持ち歩いて写真撮っとけばよかった。


結局何が原因だったんだろう?