同人誌再開

今年2月に創刊号を出した同人誌「一片雲」が第2号を出すことになって、
その方向性や運営方法に関するモロモロを話し合うため、
昨日の夜打ち合わせが行われた。
場所は渋谷の道玄坂を上っていって百軒店の通りにある「B.Y.G」というロックバー。
雨が降っていて、いかがわしい店が立ち並ぶ中店を探すのは大変だった。
2階の「イージーライダー」のポスターが貼ってある席で、
ということだったのであるがどういう事情かポスターは剥がされてしまっていた。


創刊号には僕は「ドライブ」という作品を載せた。
昔日記に載せたのを手直ししたものだ。
ありがたいことに何人かの人から好評を得た。
小説家志望ということもあって僕は2号にも作品を出すのが暗黙の了解のようになっている。
2号を出すのはいいのであるが、
僕は創刊号のときのようにあれこれ編集に意見を言うのはやめることにした。
意見を言うだけ言ってじゃあ実際に何か行動に出たり責任を取ったりしたかというとそんなことはなく、
そういうのってよくないよなーと思ったからだ。
どこのなんだろうと発言権は実績があるか、これから実績を作れそうな人が持つべきであって。
どこのなんだろうと批評家はうざったいだけだ。
なので「打ち合わせします」とメーリングリストに流れてきても
なんだかんだ理由をつけて行かないつもりでいた。
仕事が忙しくて疲れてるとか。後はもう若い人たちに任せるってことで。
でも、結局気になって顔を出してしまった。
朝から会社で仕事をしていて一段落すると会合の始まりに間に合うにはちょうどいい時間だった。
(全然関係ないが、昼に外で食べて会社に戻ろうと歩いていたら親戚のおばさんにばったり会った。
ものすごく近くで働いていることが分かった。会うのはもう7・8年ぶりか。
向こうから「もしかしてトヨヒコ君?」と声をかけられた)


店の中では Captain Beefheart や後期の The Who 、それに70年代っぽいソウルが流れていた。
話はまず予算・会計のこととなる。
創刊号は編集長が赤字分を全額負担することになった。
次号もそれでいいのか?いいわけないよな、ということ。
印刷所に対して支払う額は前回妥当だったのか?
もっと安い印刷所はなかったのか?
比較資料があるのならば検討してみれば。
いきなりそういう話になり、シビアだなあと思う。
印刷その他どういう経費があって、×百ページのものを×百部刷るとして
そのうち×百部は確実に売れる(残りは贈呈分など)となると、
不足分はいくらとなるから同人からは寄稿料としていくらを徴収しなくてはならないか。
その寄稿料はページ数に比例させるべきなのかどうか。
編集に関わったけれども作品を寄せてない人たちはどういう計算でいくら払うべきなのか。
僕はもっとどんぶり勘定なもんで今後も続くのかなーなんて思っていた。
後輩たち、恐るべし。
「金のことなんてどうでもいいんじゃないの?」と考えていたのは僕だけだった。
唯一サラリーマンとして暮らしている僕だけだった。
後輩の1人は、「編集部」が組織として機能するようになって
5年も10年も出し続けるようなものであってほしいと語る。
そうかあ、と感心する。考えてるやつは考えている。


創刊号はわずかながらも書店にも置いてもらうことができて、
友人・知人に売ったり配ったり、
関連団体である top-team-thater の上映会でも販売して
500部作ったうちの半分ぐらいがはけたという状況。
これって創刊号にしてはたいした成果なのだそうだ。
どこの同人誌も友人・知人への手売りで40部から50部ぐらい。
うまくいっているところでも100部ぐらい。
老舗の名のある同人誌ならばもっといくんだろうけど、まあそんなもんだ。
ちなみに、僕らは純文学ってことを掲げてたんだけど
今時そんなこと思ってる人たちはほとんどいないようで
同人誌と言えばダントツにアニメ系で、文章ならばSFかミステリーなのだそうだ。
11月に同人誌販売の大きなイベントがあるようで、そこ
に出展してみようかということになる。


その後は創刊号は何がいけなかったのか、それを踏まえて2号はどうすべきか、という話へ。
集まってくる小説の方で各作者のレベルアップを図るのもそうだが、
やっぱ企画・編集に力、ある種の思い入れがあってグイグイ引っ張っていかないとなーと。
じゃあどういう雑誌を見本とするかってことになって出てきたのが「紙のプロレス


一通り話し終わって、いったん解散となって、そこからは飲みながら文学談義。
ノルウェイの森」は結局いいのかどうか、など。


創刊号は様々なツテを経て東大の野崎歓先生と
松浦寿輝先生(言わずと知れた芥川賞作家でもある)にも1部進呈されている。
驚いたことに、どこにそんな暇があるのか、松浦寿輝先生は中の小説を全部読んだのだそうだ。
「どの作品も作者の『顔』が浮かんでこない」という前置きの元、
僕の小説の感想は「一番書き込んでる人の作品」とのこと。
なんか言ってくれたということで非常にありがたいといえばありがたいが、
ものすごく無難な回答。要するに印象に残らないってことなんだよな・・・。