ギャートルズの肉を食べる

『その肉』


19日の土曜日、会社の人たちとバーベキューをやることになった。
どこの公園で?とか誰がバーベキューセット持ってる?とか
計画を練っているうちに「あ、そういえば」と思い出す。
ギャートルズの『あの肉』を食べてみたい!!」
その場で「いいね」ってことになって、言い出した僕がさっそく予約する。
店は阿佐ヶ谷のパールセンターの中にある「吉澤精肉店
アド街ック天国で紹介されたりで前から知っていて、ずっと気になっていた。


バーベキューは諸般の事情により中止になりかけたり、復活してみたり、
あ−でもないこーでもないと議論が続いた結果一応「決行!」となったものの
結局この日は朝から雨でバーベキューそのものは中止。
ホームパーティー形式に変更となる。
(ほんとは延期でもよかったんだけど、
 僕が肉を予約してしまったためこの日にやらざるを得なくなり・・・)


吉澤精肉店は年配のご主人が1人で切り盛りしているようだ。
予約しようと店に電話してみたときは結構緊張した。
「『あの肉』って言うんですか、それを予約したいんですけど」
って電話口で言うのはなんつうか、間が抜けている。
僕が予約したのは「あの肉」をオーダー可能な4日前ギリギリの15日。
おっかなびっくり電話してみたら開口一番
「18日?ああ、だめだね。間に合わない」と一蹴される。
「ドイツ行ってたもんでさあ。材料が今週ないんだよ」
がっかり。もっと前に電話しておけばよかった・・・
僕がどうしたもんか?と思い悩んでる間にご主人の話は1人でどんどん先に進んでた。
「今は『その肉』ってのもあるんだよね。
『あの肉』が骨が片側に突き出したもんだとしたら、『その肉』は両側に突き出してる。
 あと、『あの肉』は大きなソーセージみたいなもんだけど
『その肉』はベーコンとかいろいろ巻いたもんで」
などなど事細かな説明に入る。
「お」と思った僕は間に割って入る「『その肉』だったら間に合いますか?」
「いや、『あの肉』と一緒。間に合わないものは間に合わない」
だったら一生懸命説明してくれなくたっていいじゃん・・・
18日に間に合うもので他に名物はないですか?って聞いたら
『とんかばぶう』ってのがあると言われる。
元ネタはもちろんシシカバブ。これを小さくして串に刺したもの。
豚肉のつくねみたいなもんか。
これだったらいいよってことで1本220円のを10本予約する。
「こいつはね、ほら、誰だったっけ?有名人の、この近くに住んでる」
なんとかって芸能人もよく買いに来るそうだ。
でも思い出した名前を聞いても僕にはわからず・・・


そのまま際限なくどこまでも話が続きそうになったのを
とりあえずやんわりと遮って、予約成立。電話を切る。
ま、この『とんかばぶう』10本でもいいか。
そう思いながら歩いていたらふと気付く。
さっき18日って言ったけど、19日の間違いじゃん。
電話をかけなおす。「すいません、先ほどの予約ですが・・・」
19日と伝えたら、「ああ、もしかしたら『その肉』の方ならいけるかもなあ」
チャンス!と思った僕はグイと引き寄せる。
「なんとかお願いします」と頼み込む。
僕にしては珍しく、交渉の場で粘りを発揮する。
何本?1本でいい?と聞かれて「2本で」とさらに強気モード。
これでようやくギャートルズの肉を食べる会、成立まで漕ぎ付けることができた。
ほっとする。
「何時に取りに来る?」と聞かれて、バーベキューが昼なので
「店が開いたらすぐ伺います」と答える。
あちこち見て調べたオープン時間である「11時でよろしいでしょうか?」
「ああー。最近夜遅いから11時に開くことないんだよねえ」
これまた頼み込むことになる。「11時でお願いします」
「そお?じゃ、頑張って店開けるようにするよ」


ってことで19日当日。
11時に行ってみたら案の定開いてない。シャッターが下りている。開く気配なし。
裏に回って覗き込むと店の中が真っ暗。
しょうがねーなーと思いつつ20分時間をつぶしてまた来てみても状況は変わらず。
仕方なく電話してみる。
「予約のオカムラですが・・・」
「あ、もう店の前?ああ、じゃあそろそろ店開けますね」
このアバウトさ。自営業にはかなわん・・・
阿佐ヶ谷らしいというか、中央線っぽいというか。
このオヤジのおおらかさというか、自由人としての生き方が
ギャートルズに出てくる『あの肉』や『その肉』を作ってみてえなと思い立ち、
実現へと向かわせるだけの力を生み出したのだろう。
ま、ありと言っちゃありだよね。


ようやく店が開く。ショーケースの上にちょこんと
『あの肉』『その肉』の手書きのポップが置いてあった。
「フランクフルトで開催された IFFA 2007コンテストで金賞受賞」って書かれていた。
今調べたら食肉見本市のこと。ドイツ行ってたってのはこのことだったのか。
ギャートルズの肉は今や海を越え、世界が認める味となったってわけだ。恐るべし。


肉は真空パックしてもらう。
『その肉』2本と『とんかばぶう』10本、ゆっくり丁寧にパックしてくれる。
店の壁には予約の伝票替わりの手書きのメモが所狭しとあちこちに貼られている。
その中にはテレビ局の取材のもあって、すげーなと思う。
一時的な町の話題じゃなくて、定期的に取り上げられているわけで。


ショーケースの中のコンビーフのソーセージとわさび味のソーセージがうまそうだったので
それもついでに100gずつもらう。
ソーセージって書いてあるけど、サイズとしてはハム。スライスしてくれる。


『とんかばぶう』220円×10本、『その肉』3150円×2本、
ソーセージが100g315円で200g。
合計は9000円ちょっとだったかな。
両手にズシリと重く、かなりの量となる。


で、ホームパーティー
オーブンで『その肉』を焼く。油が染み出て、ジュージューとおいしそうな音を立てる。
焼きあがって、肉を切り分ける。
骨の周りにスパイスの振られたベーコン、燻製の豚肉、ソーセージが巻きつけられていたのかな。
とにかく、肉。これでもかこれでもかと肉、肉、肉。豪快この上なし。すごかった・・・
焼きたてのスパイスの効いた肉をハフハフと頬張るとさすがにうまい。
大人数のパーティーで出てくると盛り上がるね、絶対。
でも想像以上の肉の量に僕ら5人でも1本食べるのは苦労した。
もう1本は焼かずに持ち帰った。
目安として7〜8人で1本あって、ちょっと足りなくなるぐらいがちょうどいいと思う。
さすがに肉ばかりは食えないし。


骨を持ってがぶりとかぶりつく写真を撮りたかったけど
骨が熱過ぎて手で持つことができず、撮影できなかったのが心残り。


『とんかばぶう』はスパイスの振られた串焼きのソーセージ。
シシカバブの正にミニチュア。
こっちは手軽に食べれて、普通においしかった。
『その肉』か『あの肉』と『とんかばぶう』人数分という組み合わせがいいんじゃないかな。


今度は『あの肉』を是非とも食べてみたいね。