こわれてしまった女の子が、夕暮の町で1人きり遊んでいた
迎えに来てくれる人はいなくて、そんなこと知らずに女の子は遊び続けた
ボロボロになったクマのぬいぐるみを抱えて
公園のブランコに揺られていた
女の子にはそれから先、いろんなことがあって、大人になった
大人になったから、他の人と同じように働き始めた
帰ってきて、お風呂に入って、眠って、起きて
朝ごはんを食べて、お化粧をして、電車に乗った
女の子には友達がいたけど、いなかった
女の子のことを好きになる男の子がいて、誘われて、出かけて
抱かれたりもしたけどなんにも思わなかった
大人たちが捨ててしまった、クマのぬいぐるみのことを考えた
食べたいものはなかった、知りたいこともなかった
こんな世界は終わってしまえばいいと思った
だけどどんなに願っても、願っても、そんなこと、起きなかった
この世界は続いた、毎日続いた、女の子のことなんて知らなかった
女の子の心の中にはあの日の公園が手付かずで残っていた
新しいクマのぬいぐるみがその片隅で、女の子が来て遊んでくれるのを待っていた
そんなぬいぐるみが何千何万といた、みんなが女の子のことを待っていた
赤や黄色の、いろんな大きさの、笑ったり、悲しそうな表情のクマたち
女の子はまた、こわれてしまった
今度はどうすることもできなかった、誰も迎えに来てはくれなかった
手を引かれて、車に乗って、知らない町に連れてかれた、そう思った
受付で渡された紙に自分のだと思う名前と、似顔絵を描いた
そこにはたくさんの人がいた
なのに女の子は1人きりだった、女の子のことはすぐにも忘れられた
女の子は毎日、ぬいぐるみのクマたちと輪になって踊った
歌を歌いながら、大声で、歌いながら