スペイン一人旅 その26(7/28:ALL THAT JAZZ)

okmrtyhk2009-08-25


ピカソ美術館を出て、先ほど見つけたいい感じのバルを通り過ぎて、
本日最後の目的地「CCCB」へ。19時過ぎ。恐らく、20時には閉まってしまうだろう。急ぐ。
「Jaume I」駅から4号線に乗って1駅、「Urquinaona」駅へ。
ここから近くの「Universitat」駅へ行きたいんだけど、ちょうどいい乗換えがない。
まどろっこしくなって、地上に出て歩く。
カタルーニャ広場の周辺。
バルセロナ随一の目抜き通りを横切る。ショッピングを楽しむ大勢の人また人。
夕暮れの傾いた光がショーウィンドウに反射して眩しい。
チラッと見ると斬新そうなデザインの服を売るブランド。でも見てる暇がない。とにかく急ぐ。
「Universitat」駅まで来て、裏通りへ。


昨日は気づかなかったけど、ここ、何気に物騒な感じがした。
MACBA(バルセロナ現代美術館)の前の広場にスケボー少年たちがたむろしていたのも分かった。
乾いてゴミゴミした空気が漂っていて、
レストランと名乗る店が安っぽくていかがわしそうな雰囲気を醸し出していて。
でも、一見してかなり充実したラインナップを誇ってそうなCDショップがあったりもした。
確かに、そういう店ってこういう一歩はずれた場所にしかない。


昨日の夕方、どこをどう歩いたのかさっぱり思い出せず。
でもそんな長い距離を歩いたわけじゃないしな、とあてずっぽうに歩いて、あっさり見つかる。
「CCCB」の建物の前も広場となっていて、ここにもまたスケボー少年たちが退屈そうにしていた。
入り口が地下となる。だだっ広い空間があって、反対端にスクリーンが掛けられていた。
イベントによっては映画の上映もなされるのだろう。いいね。
(このスペースの真上が、スケボー少年の集まる広場なのだろう)


入場料は3.5ユーロだったか。企画展2つのうちのどちらかを見るか聞かれる。
「El segle del jazz」(The Jazz Century)
「Quinquis dels 80. Cinema, premsa i carrer」(GANGS OF THE 80s. Cinema, press and the street)


どっちも捨てがたい。後者はどうも80年代のB級・C級映画に対する愛に満ち溢れてそうで。
でも今回はジャズかなあ。
受付にいた女性は、渋谷の単館上映の映画館にいそうな、アンニュイな気分を発していた。


□公式サイト
http://www.cccb.org/en/


□「El segle del jazz」の一部を紹介(写真に、映像に、音声と充実していて、雰囲気がよく分かる)
http://www.cccb.org/elsegledeljazz/en/


エスカレーターで4階だったか5階へ。
「ジャズの世紀」入るなりいきなり、古びた音でディキシーランド・ジャズ(と僕が思っているもの)。
細長い通路の右側にとてつもなく長いガラスのケース。
中には19世紀末に始まって、年代順にレコードのジャケットやポスターが飾られている。
黒人たちがダンスホールで賑やかに演奏して、踊っている光景がコミカルに描かれている。
そのケースの上に細長いスピーカーが突き出ていて、当時の音源を再生する。
19世紀の、僕がディキシーランドと思ったものはシャーシャーブツブツと入った時代物の音だった。
かなり時代が下って、1931年の Duke Ellington「Mood Indigo」や
1940年の Fats WallerDjango Reinhardt のコンサートのポスターはかっこよかったねえ。
この時代になってくると、黒人が主人公でジャズの流れるアニメ作品の現存する映像が流されたり。
「ベティちゃん」みたいなやつ。
後は、ジャズを取り上げた「Life」や「Esquire」の表紙とかね。


通路の左側には年代ごとに小さく区切られた部屋が並ぶ。
その時々のジャズにまつわるアート(主に絵画)が展示されている。
マティスの切り絵(ジャズをテーマに作品を作ってますよね)があったり、本格的。
Bebopの時代になると、Blue Note のアルバム・ジャケットがそのままアートになるわけで。
並んでるのを見てたら、唸った。たまらん。
後でガイドを読んだところ、どれもなんとデザインはアンディ・ウォーホルだった。
・「Thelonious Monk with Sony Rollins and Frank Foster」(これだけ Prestige)
Kenny Burrell (Blue Note 1543)
Johnny Griffin 「The Congregation」


僕は知らない画家だったけど、Bob Thompsonという人の「La Caprice」という絵が
左右反転して、Steve Lacy「The Forest and The Zoo」のジャケットで使われている。
元の大きな絵が飾られていた。
カラフルで残酷でユーモラスなタッチが、なんだか強く印象に残った。


そして、Roberto Masotti の写真。タイトルは「You Tourned the Tables on Me」
1971年から1981年にかけて撮影されたジャズと現代音楽のミュージシャンのポートレート
これがすごい。メモったところでは:
Telly Riley, Cecil Taylor, Sun Ra, Roscoe Michell, Meredith Monk,
John Cage, Carla Bley, Lol Coxhill


同じくポートレートでは、Giuseppe Pino による作品が正統派的なかっこよさで。
Art Blakey, Mile Davis(Get Up With It のあの六角メガネをかけている)
Coleman Humphrey, Thelonious Monk, Harbie Mann などなど。


右側に戻って、「Paul Bley Quintet」や Albert Ayler「New York Eye And Ear Control」
Ornette Coleman「The Empty Foxhole」のジャケット。
時代が現代となって、John Zorn「Masada」のシリーズが並んでいたのは驚き。
そうか、これはアート以前にジャズの歴史全てなのだ。感心させられた。


最後の部屋に掛けられていた大きな現代アート系の写真、
Jeff Wall「After Invisible Man by Ralph Ellison, The Prologue」
無数の電球のぶら下がった雑然とした部屋に、一人椅子に腰掛けて背を向けている男。
ジャズ・ミュージシャンなのだろう。
なんだこれは。この発想は。これも度肝を抜く。
http://www.tate.org.uk/modern/exhibitions/jeffwall/infocus/section5/img1.shtm


時間がなくてここも駆け足。
全然見れなかったけど、映像ライブラリーも充実していた。
これ、ほんと、すごい。日本でもやってくれないかな。
「ジャズ」の名の下、様々な角度・視点・素材からその歴史を包括的に語りきってしまう。
企画展の鏡だと思う。


外に出て、ミュージアムショップでガイドブックを買う。
18ユーロという安さにも関わらず、ものすごく分厚い。
全部スペイン語なんだけど、絵や写真、レコードのジャケットを眺めているだけで楽しい。
これはいい買い物だった。
ここに乗ってるアルバムを数々を、これから少しずつ買い揃えるんだろうな・・・


「CCCB」からまたピカソ美術館の方まで戻る。
大通りを引き返し、地下鉄に乗る。
「JAUME I」駅で下りてプリンセサ通りを歩き、夕方見つけたバルに入ってみる。
テーブル席に座る。ウェイターの1人が60歳過ぎたおじいさんで、雰囲気出てる。
日本で言うところのバゲットとオリーブが出てくる。
メニューを見る。タパスのみ。パエリヤはないんですね。
カタルーニャ風のオムレツと、ポーク・ソーセージにする。
さっそく生ビールを飲む。


ピカソ美術館で買った小さなガイドブックを読む。
読んでてなんかおかしいなあと思い始める。この絵もあの絵も見た覚えがない。
フランス人の館長による序文を読んでいてふと気づく。
これってパリのピカソ美術館のガイドブックだった・・・
でも、バルセロナで実際に絵を見て、ガイドブックでパリの絵を見て、
立体的に眺めることができるようになって、勉強になった。


カタルーニャ風のオムレツが届く。焼きたて熱々。
真っ黄色のオムレツ丸々1枚が皿に。ピザのようにナイフで6分割して食べる。
中にはジャガイモや豆が入っている。白っぽい。
(スペイン風はホウレン草やズッキーニが入っていて、カラフル)


食べ終えた頃に見計らって、ポーク・ソーセージが届く。
この辺り、ちゃんとしてる。一度に両方届いてそれっきりということがない。
ソーセージは大きいのがゴロっと。ごつごつしていて、自家製の腸詰なのだと思う。
付け合わせにサラッとしたポテトフライと豆。
ニンニク入りのマヨネーズをつけて食べる。おいしかった。


ガイドブックの絵を眺めながらビールを3杯飲んで、合計19.1ユーロ。安い。
皿に20ユーロ乗せて、残りはチップ。
食べ終わって、21時過ぎ。


4号線で「Passag de Gracia」まで出て、3号線で「Paral lel」まで。
ホテルに戻ってくる。シャワーを浴びて荷物を整理する。
スペイン最後の夜も淡々と過ぎていく。
テレビを見るのも飽きて、23時過ぎには眠る。