ベルリン その3(2/4:ベルリン、テーゲル空港)



6人掛けの小さな飛行機だった。
ドイツの首都に向かうのにジャンボじゃない。
ヨーロッパ圏内の移動は近くていろいろとルートがあるから乗客もそれほど多くないのか。
それとも1日に複数回のフライトがあって、深夜到着のだと乗客も少ないということか。
乗ってみると若干空席あり。離陸する。23:20到着予定。
ドイツとの時差は1時間。実質的な搭乗時間は2時間程度。


機内食はなかったけど飲み物のサービスはあって、
ビールがあったので今回はグロールシュにする。
皮付きポテトチップの入った小さな袋をもらう。


既に外は夜。真夜中。
飛行機はあっさりとベルリン、テーゲル空港に到着する。
外に出ようとするが、通路に並んだ人の列がノロノロとしか進まない。
どうしたのだろうか? と思う。
5分ほど待って機内の外に出ると、すぐ先でパスポート・コントロールがあった。
その順番待ちとなっていた。終えるとその横に手荷物受け取りのターン・テーブル。
非常にコンパクトなつくりだった。
空港で1つの大きな入国審査、手荷物受け取りではなく、ゲートごと。
入国審査もお互いほぼ無言で進められてハローとサンキューを交わす程度。
スーツケースが無事に出てきて、バスのターミナルを探して空港の中を歩く。
チェックイン・カウンターも店も既に全て閉まっている。
それらを通り過ぎる。
足音とわずかな話し声、スーツケースやキャリーカートを引きずる音だけが聞こえる。


空港の外に出る、掲示を見るとバスのX9ラインが10分後に到着とある。
(ベルリンのバス停はどこも、あと何分で何が到着という表示がなされていた)
ほっとする。タクシーに乗らなくてよい。券売機でバスのチケットを買う。
あちこちにあった。Berlin City Tour Cardの5日間のを買う。28.90ユーロ。
バス、市電、地下鉄、路面電車が乗り放題となる。
同心円状にゾーンが決まっていて、Aは中心部、Cは郊外。
僕はAとBのを買う。もちろん、Cも可能なのを買うと高くなる。
バスが来る。刻印機で打刻すればよいようだが、見つからない。
とりあえずバスに乗る。黒人の運転手にチケットを見せる。
そこ、と刻印機を指差す。バスの中にあった。中に差し込むと日付と時刻が打たれた。
何人か乗り込んで時刻通りに出発する。
客はほとんどなし。機内にあれだけいた乗客はどこに行ったのだろう?
みな出迎えがあったのか。


バスの中にはもう1人車掌のような立場の人がいて
(といってもそれらしい制服や帽子などなくて)
停留所ごとに乗り降りする人の数をクリップボードに挟んだ紙に記載していた。
日本にいる間に僕が何よりも気になっていた
「バスの中でスーツケースはどうするのか? トランクに預けて大丈夫か?」
についてはただ単にバスの中が広くて持ち込み可能になっているだけだった。
4人掛けの席に1人で座って向かいの席との間にスーツケースを置いた。


バスが走り出す。真夜中。歩いている人は皆無。車がわずかに走っているだけ。
路上駐車の車が隙間なく並んでいる。
建物はゴツゴツと野暮ったく見える。
仕事帰りなのか停留所に寒そうに立って待っている人がいる。
市内中心部に近づくと15歳ぐらいの子供たち3人組が騒々しく乗り込んできた。
窓の外にTOSHIBAのネオンが見えた。


終点、Zoologischer Garten(動物園駅)で下りる。
ホテルが終点にあって助かった。
海外のバスは難しい。
今どこにいるのか分からなくなったり、今停まった停留所がどこなのか分からなかったり。
運転手が口頭で言うだけだったりしてそれを聞き逃したらアウトだとか。
ドイツのバスは、地下鉄も市電もそうだけど、
車内では必ず次の駅がどこでという表示がなされていて、
停留所や駅の掲示も大きくて分かりやすかった。
(ちなみに僕は日本で、BVG(ベルリン交通局)のバス路線図をプリントアウトしておいた。
 http://www.bvg.de/index.php/de/3761/name/Expressbus.html )


動物園駅。
酔っ払った若者たちが数人騒いでいた。しかし、数人程度。
荒廃している、危険、というイメージはない。
旅行に出る前に『哀しみのクリスチアーネ』(原題は「われら動物園駅の子供たち」)を読んで、
まだ10代前半の少女クリスチーネ・Fがヘロイン中毒になって売春客を取るようになる、
動物園駅前にてそういう人間たちが大勢集まっていたという悲惨な描写に何度も出会っていた。
果たして今はどうなっているのか…
とても気になっていた。今は完全に冷戦時代の過去が払拭されたようだ。


ホテルを探す。こっち方面だと勘で歩き出したら当たってた。
地下鉄の最寄り駅、Kurfurstendammの入口が見えた。
しかし、地図を見てもあるべき場所にホテルが見当たらない。
通りを東へかなり先まで歩いて引き返し、横断歩道を渡って西側へ。
やはり見つからなくて南側の通りへ。やはり見つからず。
周りを見渡してみるとグッチやバーバリーにロレックス。
ここは東京で言うならば銀座に該当する繁華街かもしれなかった。


最初に恐らくここだろうと見立てたポイントに戻る。
ちゃんと見ると入口があった。
店舗と店舗の間にあって小さくて分かりにくかった。
しかし落ち着いて見上げてみると建物の屋根に大きくホテルのネオンが光っていた。
ドアを開けようとしても開かず。鍵がかかっている。
たまたま中にいた旅行客が手真似で外のブザーを鳴らすようにと教えてくれた。
鳴らすと鍵が開いた。午前0時を過ぎていたからだろう。


エレベーターで受付のある6階へ。チェックインする。
ホテルの係りの人はテレビでサッカーの試合を見ていた。
そのことに妙にドイツっぽいな、と感じた。
鍵を受け取って5階の部屋へ。


格安の航空券とホテルを手配したので、部屋は観光客向けのビジネスホテルのようだった。
テレビと机と椅子、ベッドが2つあるだけ。
シャワーはあっても浴槽はなし。部屋にはシャガールのような絵がかかっている。
iPhoneを充電しようとしてコンセントがないことに気付く。
仕方なくドライヤーのプラグを抜く。コンセントの形状はC型だった。
テレビをつける。小さな音で聞く。
スーツケースを開けて荷物を整理する。
シャワーを浴びて眠る。
午前1時半過ぎ。日本では9時半か。さすがに眠い。
ベッドに潜り込む。