熊野古道を歩く その2(2/17:羽田〜関空〜和歌山)

4時起きで着替えて荷物を背負って家を出て、荻窪駅へ。
空はまだ暗い。Speenaの1枚目を聞きながら歩く。
5時の始発に間に合う。


ダウンジャケットは山歩きで破れてもいいように
アメ村で2年前に4,000円ぐらいで買った一番安いのを。
黒のジーパン。そして正月の帰省でも履いた黒のショートブーツ。


車内で中上健次紀州』を読み始める。
半島というものの特異さをまずは挙げている。そして小栗判官の纏う意味。
土地の者は新宮をシングと呼び、本宮をホングと呼ぶ。イントネーションは後ろのほう。
新宮に三代住んでいる家はほとんどない。みな流れていく。入ってきて、出て行く。
熊野川は女の性器、膣のようにある」
「新宮は水の上にある土地である。(中略)雨、水、それが新宮の新宮たるところであろう」
「美しさというものに、差別という回路を通すことによって、性と宗教と暴力が増幅されて出てくる」


銀座で下りて、浜松町へ。モノレールに乗り換える。
羽田空港。空が明るくなってきた。
改札を出てすぐのコンビ二でメモを取るためのボールペンを買う。そのまま保安場へ。
iPhoneにダウンロードした二次元バーコードをかざすだけというのは便利だ。
紀州』の続きを読みながら搭乗の時間を待つ。
周りは出張のビジネスマンばかり。
ガラス張りの向こう、滑走路にポケモンジェットが所在無く羽を休めている。


飛行機に乗り込む。
非常口横の席。「緊急の際にはご協力お願いします」と2人の客室乗務員からそれぞれ言われる。
何をなすべきか書かれたカードを読む。
他のお客様を静止すること、非常口を開放すること、脱出スライドにて援助すること。
窓の外を眺めると遠くを貨物船がノロノロと通り過ぎていく。
「MOL」と大きく書かれている。あれは何の意味なのか。
離陸を前にして客室乗務員たちが慌しく、頭上の荷物入れがきちんと閉まっているか、
カートが所定の位置に収まっているかチェックを行なう。
滑走路を進み始める。地上係員たちが何かの儀式のように敬礼をして、手を振る。
離陸。橋の上にギッシリと並ぶ車たちを目にした次の瞬間には高度を上げて雲の中へ。
突き抜ける。地上では曇り空だったのが眩しいぐらいに日が出ていた。


関西国際空港到着。7:20発、8:40着の予定が向かい風で遅れる。
出口まで急ぐ。いくつもの動く歩道を駆け抜けた後でふと時計を見ると「8:57」
まだいくつもある。9時ちょうど発の和歌山駅行きのバスは完全にアウト。
バス乗り場には3分遅れで到着した。
これに間に合ったら10時過ぎの「スーパーくろしお号」に乗って
昼過ぎには新宮へ、と目論んでいたのだが…


気を取り直してみどりの窓口へ。
うまいことJRを乗り継いだら10時過ぎのに間に合うんじゃないかと思って聞いてみるが、
やはりその次の12時発の「オーシャンアロー」となるようだ。
仕方なくそちらの指定席を取る。乗車券が4,100円、特急券が2,390円。けっこうする。
逆に言うとそれだけ距離があるということか。


関西空港線に乗って日根野紀州路快速に乗り換える。1時間もあれば着くだろう。
さてこれから3時間どうするか。
関西国際空港をあれこれ見て回るか、和歌山までまずは出てしまうか。
空港は今から20年近く前に作られたとはいえ、まだ銀色にピカピカと真新しい感じ。
興味はあるけど今回の旅の目的ではない。次の関西空港線の普通に乗ることにする。


川を渡る。工業地帯。高層ビル。観覧車。
2駅で日根野。階段を上り下りして隣のホームへ。
それほど待たずに電車が来る。
乗りかえの駅とはいえ、何か特色があるわけでもない。周りが開けているわけでもない。
確かそれまで単なるローカル線の駅だったのが、関西国際空港ができて、
直線距離で最も近い駅ということで拡張されたんだったか。
到着した電車は前の半分が切り離されて空港へ、後ろの方が和歌山へと向かう。
(知らなかった僕はホームの先頭の方で待っていて、慌てて後ろの方へと走った)


車内は左に2列、通路を挟んで右に1列という席の並びだった。
平日の午前中。お年寄りの方が多かった。
堂々と遅刻しているのか、高校生の姿も見かける。
紀州』の続きを読む。


10時半前に和歌山駅到着。いったん外に出るために切符にスタンプを押してもらう。
駅ビルが新しくなっているように思う。
「MIO」と名前が変わったのか。以前は「VIVO」だった。
コインロッカーに荷物を預けて、ケヤキ大通りを歩く。
相変わらず人通りが全くない。この寂れ加減がなんとも懐かしい。
昭和の時代からそのままのような喫茶店であるとか。
和歌山の人には悪いけど、なんだかほっとする。
和歌山城まで行けるだろうか? と歩いてみる。
片道30分はかかるんだったか。11時が近付いて途中で引き返すことにする。


駅前の商店街にある「和歌一ラーメン」という店が
前から気になっていて、今回入るつもりだった。
しかし、ガイドブックに書いてあった11時を過ぎて営業している雰囲気がない。
しょうがないかと「MIO」の地下にあった「丸美商店」へ。
どこかの外食チェーンが駅ビルの依頼を受けてプロデュース、
和歌山ラーメンを複製して提供するという感じの味、佇まい。
チャーシュー麺850円と玉子50円。
(他の店同様、皿に積まれているのを一つ取って皮を剥く)
可もなく不可もなく、標準的な和歌山ラーメンだった。


駅に戻ったらなにやら人だかりが。
係員が拡声器をもってアナウンスしている。
「11時7分に発生しました人身事故により、阪和線は全線運転を見合わせております。
 12時発のオーシャンアロー号は大幅な遅れが見込まれます。
 なお、大阪方面にお急ぎのお客様につきましては南海鉄道からの振替輸送を行なっております」


まさかそんなことが。ついてない。