そういう人が結構いるんじゃないかと思うんだけど、
小さい頃、暗闇の中で眠るということが怖かった。
全て消さないで、ひとつ手前のオレンジ色の明かりにする。
(朝起きると母がいつのまにか消していたことに気付く)
ドアを開けたままにして、
廊下を挟んで向こうの居間で母が見ているテレビの、音と光がそっと漏れてくる。
それがなんだかほっとする。
夜の静けさもまた、怖い。吸い込まれそうで。
夜の暗闇はお化けや幽霊が出るから怖いというのとはちょっと違う。
それよりはむしろ、暗闇の向こうにポッカリともうひとつの世界が口を開けていて、
ちょっとでも足を踏み入れたら二度と戻って来れないというような。
それを防ぐためにも枕元や布団の中にぬいぐるみを配置する。
ペンギンであったり、サルであったり、
お気に入りのぬいぐるみというものが僕にもあった。
そして眠れない夜には、話しかけもした。
(今の僕を知っている人からしたらブハハハハと笑われそうだけど)
それがそうじゃなくなったのはいつからだろう?
これもまたひとつの、大人になった境目だと思う。
中学生になって、それまで妹と使っていた子ども部屋を出て一人部屋に移ってからか。
そのとき一瞬にして、思春期に入る。
ドアを開けたままにして眠るなんてありえなくなった。
夜の闇は、単なる光源の欠如に過ぎなくなった。
夜道を歩く怖さは、なんか変なものを踏んづけるんじゃないかという
チンケな不安に差し替わった。
そこのところに関係するんだろうけど、
小学校の頃あれほど好きだった幽霊とか宇宙人とか四次元の話にも興味がなくなった。
信じるでも信じないでもなく、ただただ興味がない。
僕という人間は、そこのところからつまらなくなっていった。
何か大事なものを失った。
あなたも、そうじゃないですか?