The Artist Formerly Known As Prince

今年初めの David Bowie と同じぐらい、先日の Prince の死は残念だった。
突然のことで、何を思えばいいのかよくわからなかった。
どちらもある意味、異世界から来たことになっていて永遠に生きるものとされていた。
肉体は老いても、ヴァンパイアのように
不老不死となる術を知ってるんじゃないか、と。


インフルエンザとも薬物ともエイズとも言われるが、真相はよくわからない。
何度も改名したり、ワーナーに出入りを繰り返したり、
膨大な量の未発表レコーディングがあるとされていたり、
不可解な行動が多かったけど、それも天才だからの一言で片付けられていた。
周りにどれだけの優秀なミュージシャンがいて
どれだけ華やかできわどいパーティーが繰り広げられていても
その孤独が癒されることはない。
満たされない気持ちがモンスターのように肥大化していく。
1:1の濃密な関係を求めれば求めるほど、結局は孤絶する。
この世界で他の誰にも生み出せない、
むせかえるほどのセクシャリティに充ちた音楽となる。


僕がリアルタイムに聞いたのは1991年の『Diamonds & Pearls』からで
恥ずかしながらこのアルバムが一番好きで一番よく聞く。
『Lovesexy』がキワモノ扱いされ、その次がバットマンのサントラ。
さらにその次が自身が監督主演したときの映画。
田舎の高校生にはよくわからない存在だった。


ポップでファンキーな曲よりも
その繊細な魂がむき出しになったようなバラードがいい。
「When 2 R In Love」であるとか
「Sometimes It Snows In April」とか。
シンプルな歌だけど、差し込む光の中に向こう側の世界を垣間見るような。


そう、Prince にしか見ることのできない世界があった。
それは何百曲とも何千曲ともされる未発表曲の銀河系に浮かび上がる
星座のようなものか。
僕らが Prince の音楽に聞いていたのは、未知の星座のようなものだった。