野球部の男の子、女の子

先週末青森に行って撮影した野球部の映像を編集している。
一生懸命声を出しているが、踏み込みが足りずにコーチや監督に叱られる。
そのときまたオッスと声を出して受け止める。
いいなあ。
こういうのって10代でないと体験できないし、素直に受け入れられない。
この日々のことがきっと人生の糧になる。


朝暗いうちに起きて、自転車に乗って何十分もかけて学校に行って、
朝練をして、授業の合間に購買で焼きそばパンを買って、昼は昼で弁当を食べて、
放課後に皆で真っ黒になるまで練習をして、また何十分もかけて家に帰る。
寄道している暇はない。ご飯を食べて風呂に入って、予習と復習。
寝る前に庭で素振りをするとか筋トレするという子もいるだろう。
その合間合間に憧れのプロ野球選手のことを考え、
選択授業で一緒になる女の子を考え、この前の試合のことを考え、
授業で当てられた微積分のことを考え、将来のことを、受験のことを考える。


グラウンド脇の小屋では女子マネージャーたちがおにぎりを握っていた。
僕らオッサンが入ってきて話しかけるとキャーキャー恥ずかしそうにした。
誰か一人インタビューを、と頼むとはにかみながら
「キャー、○○がやってよー」「××がいいよー」と。
普通の女の子たちだった。
次の日の試合では一人はマイクを握って選手の呼び出しを。
もう一人はベンチでスコアラーを。
残りの何人かはバックネット裏で試合を応援していた。


先輩たちの中では誰がカッコイイかとか、
ジャニーズの誰それのこととか、商店街のパン屋のこととか、
この前の中間テストのこととか、明治の当たらしいチョコレートのこととか。


あの頃考えたことは、話したことは、たわいもなくて何一つ覚えていない。
だけど楽しくて、真剣で、掛け替えのない時間だった。
振り返ってみれば人生で一番いいときなんだけど、
その頃は惨めな思いをしたり、不安に駆られたりで、
とてもじゃないけどそれどころじゃなかった。


うらやましい気持ちになりながら、
僕はひとり遠く離れた部屋の中で映像を編集する。