Pink Floyd 『Early Years』1971/1972

Pink Floyd 『Early Years』というボックスセットが昨年発売される。
1965年の結成時から1972年の『雲の影』までのレア音源・映像を集めた CD / DVD / Blu-ray 27枚組。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/PinkFloyd/info/470980
輸入盤でも10万近くして、さすがにこれは無理と思っていたら
1965-67 / 1968/ 1969 / 1970 / /1971 / 1972 と6分割されて発売された。
特典のボーナスコンテンツ集は対象外となったけど、まあいいかと。
こちらなら全部合わせても4万ぐらい。毎月ひとつずつコツコツと買い集めた。
それが少し前に全部揃って、ようやく見始めた。


個人的に一番嬉しいのは1972『Live at Pompeii』のCDで、
入手困難で Amazon でも結構な値段がついてたんですよね。
Pink Floyd のライヴ音源ではやっぱこれが一番いいと思う。
映像としても個人的に、ロック史上5本の指に入る内容ではないかと。


以前別のパッケージで再発された時に買ったんだけど
もう一度その世界に浸りたくて、
昨晩会社から帰ってきたあとで食事しながら妻と見てみた。
一通り Pink Floyd の歴史を解説する。
シド・バレットが精神を病んで抜けてからはロジャー・ウォーターズの時代となる。
『原子心母』が話題となって来日。続く『おせっかい』でイギリスを代表するグループとなる。
『狂気』(The Dark Side of the Moon)が何十年とヒットチャートに入る。
シド・バレットに捧げた『炎』のあとはジョージ・オーウェルに影響を受けた『アニマルズ』
そして音楽的にも思想的にも頂点に立った2枚組の『ザ・ウォール』では
ステージの上にメンバーやスタッフがレンガをひとつひとつ運んできて壁を作る…
そのロジャー・ウォーターズが抜けてからはデイヴ・ギルモア時代になるが、
何の思想もないスタジアム・ロックに成り果て、今に至る。
ロジャー・ウォーターズもまた豪華メンバーを集めて『ザ・ウォール』再現ライブを。
そんなロックビジネスの裏と表。


『Live at Pompeii』は1972年、『狂気』の発表前。
イタリアの、火山に埋もれた都市として知られるポンペイの廃墟となったコロシアムに
スピーカーだとか機材を並べ、観客不在のコンサートを繰り広げる。
真昼の太陽の下、「神秘」の曲でドラを叩くロージャー・ウォーターズがやたらかっこいい。
ひたむきに演奏するメンバーたちの姿にポンペイの町の空撮であるとか、
打ち上げられるロケット、宇宙から見た地球の映像が重ねられる。
このコンセプトが素晴らしい。
ロックという器に音楽以外の何を持ちこむかという意味で「精神性」をもたらした Pink Floyd
70年代ロックのひとつの極点だと思う。
(なので最近、『Live at Pompeii 完全版』発売とあるのを見かけて、おおと思ったのであるが、
 デイヴ・ギルモアによる最近のステージとわかってものすごくがっかりした)


今日は「1971」を。
CD の方の BBC ラジオでのセッションもライブアルバムとしてなかなかよかった。
「Fat Old Sun」が10分を超える壮大なナンバーとなっていた。
アルバム未収録ながらライブの定番曲だった「Embryo」に
代表曲「One Of These Days」と「Echoes」


映像の方は何と言っても
1971年のイベント「箱根アフロディーテ」での1曲15分近い「原子心母」
最後にテレビ埼玉のテロップが入る。
ビデオで残されていたのか。画質が悪く、ところどころノイズが入る。
それでも歴史的価値は高い。
日本の観客たちはヒッピー崩れが多いのか、和製ウッドストックって感じ。
日章旗を体にまとった男がいたり。
演奏と同期した映像はほとんどなく、ロマンスカーに乗って箱根に向かうメンバーだとか
時系列は無視してとりとめなくアトランダムに記録映像が並ぶ。
しかしこれが当時の雰囲気を色濃く伝えるんですね。
夜になってからの演奏は「吹けよ風、呼べよ嵐」(「One Of These Days」の邦訳)と
言わんばかりに風の強い中、演奏していた。


その他、オーケストラとコーラス隊を従えての「原子心母」や
アニメ映像を伴った「One Of These Days」など。
1971年のもそうだけど、なぜかフランスのテレビ番組ばかり彼らにインタビューをする。