のぞみ265号の事件

9日土曜の夜に発生した、東海道新幹線「のぞみ265号」の殺傷事件。
次の日の朝知って、ぞっとした気持ちになる。
今もゾワゾワした気分が続いている。
僕らはその日大阪で過ごして、20:56 新大阪駅発の「のぞみ430号」に乗った。
事件が起きたのは 21:45頃とされていて、事件後3時間程小田原駅に停車していたという。
すれ違っている。
ずっとそのことを知らなかった。
「その場に居合わせていたかもしれない」ということよりも
「そのことを翌朝まで知らなかった」ことが怖かった、と妻は言っていた。


僕は夕方からずっと酔っぱらっていて、
車内でも缶チューハイを飲んで、その頃はすっかり眠り込んでいた。
予定通りのはずなので 23:29 頃、東京駅に着いている。
何事もなくホームに下りて改札を出る。中央線に乗る。
ざわざわした雰囲気は構内では特に感じなかった。
JRの職員も余計な騒ぎを招かないために黙っていたのかもしれない。
車内アナウンスもなかった。


その彼が僕らの車両にいたならば
眠ってる僕は座席を盾にすることもなく、真っ先にやられていただろう。
ナタで切り付けられて、血の海に沈んだことだろう。
その血痕の残る床と僕らはすれ違っていた…


やり場のない鬱屈した気持ちを抱えたまま都会の片隅に生きる人間はいくらでもいる。
ひとつ、またひとつと膿んだ心にナイフを突きつけられて
それはやがて理由のない殺意としてあふれ出す。
そんな一人がバスや新幹線に乗り込んだり、雑踏を歩いたりというのは
もはや全く珍しいことではなくなった。
あとは確率や統計の問題だけなのだ。


5年後、切りつけられるのは僕やあなたかもしれないし、
切りつけているのは10年後の変り果てた僕やあなたかもしれない。