The Planets 「Travel the Stars」

今思うとあれはなんだったんだろう、だけど熱心に探すほどのものでもない。
そういうのが誰しもある。
チラシを見ただけの映画。草むらに落ちていた漫画。
話題にはなったけど面白そうに思えなかった芸人のネタ。
 
僕にとってそんなもののひとつにTh e Planets というバンドがあった。
中学生の頃だと思う。
深夜番組のスポットCMでその映像を見たのか。
あるいは雑誌の広告か。
メタリックというか灰色の近未来的な空間の中で
銀色っぽい衣装を着たメンバーが変なポーズで静止していた。
おもちゃの銃を構えていたり。惑星の模型を持っていたり。
 
青森の片田舎で見かけるぐらいだから金をかけて全国的に売るつもりだったんだろうな。
しかし、売れなかった。すぐ消えてしまったのだろうと思われる。
ずっと頭の片隅にあって、30年後。
この前新宿の DiskUnion の特価100円コーナーで掘り出し物がないか漁っていたら見つけた。
おお! と思い買う。100円ならまあいいか。
 
日本盤の洋楽なんだけど解説、対訳はなし。帯はあり。
東芝EMIから出ていて、MADE IN JAPAN と書いてあった。
情報はそれぐらい。
クレジットを読んでみると
メンバーは皆ニックネームでどの国かわからないが、
ベルリンで録音しているのでその辺りのバンドなのだろう。
プロデューサーも外国人。
ミックスがベルリンと東京のスタジオで、カバーデザインにも日本人の名前が。
そしてよく見るとなぜか2曲であの佐久間正英がゲスト参加していた。
四人囃子プラスチックスのメンバーで、GLAYエレカシをプロデュースしたあの佐久間正英が。
 
何かのきっかけでこのベルリンのバンドが日本の東芝EMIの目に留まり、
売ってみようということになったのだろう。
Discogs で調べてみるとこの1枚しか出していない。
その後異国の地であれこれあって、たちゆかなくなって解散。そう思うと不遇だ。
日本人の目に留まらなかったら細々とでも楽しく演奏を続けていたのかもしれない。
いや、もともと企画もので寄せ集めのメンバーだったのかもしれない。
今となってはよくわからず。
ここまで文脈から切り離されたバンドというのも初めてだ。
 
実際に聞いてみると、案外、ニューウェーヴな音だった。
パンクやロカビリーやあれこれ足して引き算した音、という意味での。
男女のツインヴォーカルによるポップなギターロック。
神経質で突拍子のないところを抜いた The B-52's というのが一番近いか。
ということは、普通…
悪くはないけど、取り立てて人に勧めたいというほどのものでもない。
いい曲もいくつかあるけど、特に記憶に残らない曲も多い。
ここまで普通のバンド、むしろ珍しい。
東芝EMIは何を狙ったんだろう。
いや、ほんと、今キャッチをつけるなら「The B-52'sへのドイツからの返答」
 
メンバーのその後が案外意外なことになってたりしないか、なんて思ってみたり。
The Planets 「Travel the Stars」というアルバム。
次聞くのが何年後かわからないけど、売ることはないかな。