初めてのグアム その6

3日目、13日、日曜日。
義父母と妻と4人で朝、夜明けのビーチを散歩することになっていて6時半に集合。
6時に僕は起きるが、妻は何時に寝たのか具合が悪そう。
それでも行くという。


外はまだ暗く、少し青みがかってきたくらいか。
プールの間を抜けて波打ち際に下りていく。
10分、20分のうちにどんどん空が白く、明るくなっていく。
波の音だけの静かなグアム。
散歩している人、ジョギングしている人は少ない。
波に洗われた木の枝や日本では見たことのないきれいな白い花が砂浜に落ちたのや、
錨の錆びたものとか、これはなんだと言いながら歩く。
もちろんきれいなものばかりではなく魚の死骸にハエが群がっているというのもある。
ホテルのプライヴェートビーチを出て、広い砂浜へ。
昨日、結婚式が終わってバスに乗って撮影しに来たところに差し掛かる。
後方にライフガードの監視台があった。
そのさらに後方に「GUAM」と書かれた等身大の大きなオブジェが置かれていて、
その隙間から顔を出して写真を撮影する。


そのまま引き返さずに駐車場を経由して帰ることにする。
芝生にポツリポツリと木が立っているが、どれも立派で大きい。
種類にも寄るんだろうけど、
周りに他の木がなかったらどこまでも横に広がって育つものなんだなあと。
ヤシの木だけがひょろりとしている。


プライヴェートビーチに戻り、プールを経由してホテルの中へ。
僕らが昨日の朝、マフィンサンドなどを買ったカフェで朝食を買う。
妻はフルーツだけにする。
一度部屋に戻って妻はしばらく寝て体を休めると。
僕は1人、気になっていたビュッフェ形式のレストランへ。
そんなに腹は減ってなくて、食べると後悔するとわかっていたのに…
国内のビジネスホテルだろうと、海外の観光地のホテルだろうと、
期待以上の朝食に出会うことはほぼないのに、どうしても行ってみたくなってしまう。
塩辛いベーコンだとかベチャベチャのスクランブルエッグが食べたくなって。
ホテルのサイトで調べてみたらメニュー例に納豆とあって、あー今一番食べたいの納豆だなと。
期待して行ってみるが、この日はなし。いつもはあるのかな。わからず。
炒飯、甘ったるいタレをかけた餃子、目玉焼き、ローストチキン、
たくさん食べ過ぎてやはり後悔した。27ドルは高い。
ずっと食べすぎだったので一食抜かせばよかった。
しかしこういう後悔が旅の付きもの。


部屋に戻る。午前中は皆で出かけようと
新郎がオプショナルツアーのイルカウオッチングを手配してくれていた。
妻は絶対船酔いするよねと迷う。
しかし水を差すわけにはいかないと一緒に行くことにする。


1日目、部屋に初めて入ったときに床に白い貝殻が落ちていた。
前にこの部屋を利用した人が落として、ルームクリーニングで見落とされた?
と思いつつどこかに動かした。
それがまた床にある。というか、もそもそ動いていた。ヤドカリだった。
誰かが意図的に持ってきたのか、たまたまくっついてきたのか。
海から切り離され、10階もの高さで懸命に生きるヤドカリ。
死なせたくないなあと思う。
しかし餌がなにかもわからないし、僕らにできることはない。
東京の家で一人寂しく待っているみみたを重ねてしまう。
ペットシッターさんから送られてくる写真は、相変わらず楽しくなさそう。
ぶーぶーとしてる。


9時前にロビーに集合して、
現地のダイビングスクール、マリンアクティビティを手掛ける会社のマイクロバスが迎えに来る。
西側へ。シェラトンの近くに事務所があった。
サーファーっぽい日本人の男性がサバサバと受付。
元気なよく喋る方で、ハネムーンと聞くと指輪を無くさないように! と何度も念押しされる。
初めて左手の薬指に指輪をして、そのことを忘れたまま海で泳いで無くしてしまうケースがあると。
つい先日もそれがあってスキューバダイビングで潜って探すが見つからなかった。


イルカウオッチングへと向かうバスに乗り換えて、30分ほど走ったか。島の反対側に向かうという。
タモン湾沿いのホテルや大型のレストラン、スーパーマーケットなどが並ぶエリアはすぐに終わって、
田舎へ。海沿いにローカルな飲食店や民家の群れが現れては消える。墓地もあったな。
アメリカ海軍の施設もあって、その脇の小さな博物館の入り口には細長い潜水艦が置かれていた。
バスの中では Sublime系のスカパンクが。やっぱ Sublime って偉大だなあと思う。
南国のドライブで聞く音楽としては最高。
ツアーガイドの男性はよくありがちな、ガタイのよくてチャラい感じで冗談を言ってばかりの。
日本語、韓国語を少しだけ話す。
本名はエドワードだったかな。
でも、「ニホンゴデノナマエハマツモトヒトシネ、マッチャントヨンデクダサイ」と。
韓国語でも同様に全然違う名前を。韓国で有名な俳優かコメディアンだったのだろう。


ヨットハーバーに着く。イルカウオッチング用のクルーザーがいくつか並んでいる。
どれも2階建てで後方に子供用の滑り台が設置されている。
他、個人所有と思われる小さなヨットも何隻か。
クルーザーのひとつに残り込む。
サンダルを脱いでクーラーボックスに預けて、裸足で中を歩く。
周りのグループは皆、老若男女問わず、水着で参加している。
先ほどの事務所でも説明があったんだけど、イルカを見た後でシュノーケリングができたんですね。
入らなかったのは僕らだけ。
ウェディングが目的だったので、水着を持っていこうなんて思いもしなかった。


ヨットの船長が表れる。
よく陽に焼けた初老の男性。グアムの男性に多かったけど、足や腕に刺青をしている。
出航までの間、エドワードが場を盛り上げる。
若い男性と本気で腕相撲をして勝ち、小さい男の子には負けてみせる。
冷たい氷水やクーラーボックスにジュースを用意していてそれは無料だと。
だけど紙コップは1ドル、ストローは2ドルだと。
でも皆さんのために今日はそれも無料にしましょう! 定番ですね。


あちこちから集まった参加者でクルーザーがいっぱいになり、出航。
陸地ではほどよく暑かったのが、沖に出るとさすがに肌寒くなる。
甲板に出ると日本人観光客は舳先でタイタニックごっこ
2階に上がってそれを見下ろしたり。
女子大生のグループにはエドワードがひとりずつディカプリオの役をやってあげていた。


ゆっくりのんびり進んで、10分ほどするとイルカの集まっているエリアへ。
僕らのを含めて3隻か4隻、少し離れて集まっていたか。
向こうの、先に来ていたクルーザーの周りにイルカが現れる。
多くは2頭が連れ立って泳ぎ、共に水面に顔を出す。
青い水の透明度は高く、手を伸ばせば届きそうなくらいに水深が浅く見える。
そのうちに僕らのクルーザーの周りにもイルカが近づいてきた。
静止してゆっくり回転している側を泳ぎ、飛び跳ねる。
イルカは航行する船の横を一緒に泳ぐのが好きなんですよね。
青函連絡船に乗っていてもイルカが時々現れて、指さし合ったなあ。
今回の船もスマホ片手にあっちにいる、こっちにもいると皆右に左に大はしゃぎして写真を撮った。


イルカを見終わると少し船を移動させて無人島の近くへ。
背の低い木々とカモメの群れ。
その近くにブイを流し、各自ライフジャケットをつけてシュノーケリング
子ども用には滑り台、トランポリンも。
オプションによってはパラセイリングと組み合わせるというのもあるんだろうな。
皆海に入って泳ぎ、漂い、歓声を上げている。
妻の船酔いが本格的になり、ぐったりしている。
その横で甲板に寝そべり、空を眺めた。
抜けるような青い空に真っ白な雲が浮かんでいる。
その中を飛行機雲がまっすぐ貫いていく。


水から出てきた人たちは船が用意した氷水のシャワーを浴びる。
タオルで体を覆うが寒そうにしている人が多かった。
エドワードは紙コップの底をくりぬき、
手を使わずに器用に両目にくっつけて目が飛び出し方のようにして子どもたちを笑わせる。
2階の船長は今日は孫の誕生日だとスマホ越しに女の子たちにハッピーバースデーを歌わせていた。
スタッフたちのこの場を楽しもうぜ! というノリがよかった。


クルーザーは行きと違って全速力で港に戻った。
サンダルを受け取り、桟橋を歩いてバスに。
ランチ付き、ということでバスの中で弁当を受け取った。
各自のホテルまで経由して送ってくれた。