国語の教科書で断片的に覚えている作品

日曜は『走っけろメロス』を聞いたのち、教科書の話になった。
先日神保町のブックハウスカフェを訪れたときも
小学校の国語の教科書に掲載された懐かしい読み物を集めたアンソロジーが棚に並んでいた。
 
いくつか今も読み返したい作品がある。
横光利一「蠅」であるとか。林京子「ギヤマンビードロ」とか。
タイトルが出てくるのはほんの一握りで、多くは断片しか思い出せない。
そのとき3つ話してみたが、妻にはわからず。
検索してみても全然ダメで今のところ全く手掛かりなし。
あの作品をもう一度四で見たくて、今かなりもどかしい。
 
・中近東が舞台だったように思う。和田誠風のユーモラスな挿絵だった。
 主人公が王宮の晩餐会に招かれたが、
 いつものみすぼらしい格好だったので入り口で追い払われた。
 きちんと着飾っていくと入れてもらえて食事の席に案内された。
 豪華なごちそうが出る。
 すると主人公は一口も食べず、上着のポケットにピラフを詰め込んだ。
 招待されたのは僕ではなくてこの服なんだからなと。
 教訓めいた話で道徳の教科書だったかもしれない。
 ピラフであって炒飯ではないとか、その違いは何だろうかと子供心に思った。
 デパートの上の階のレストランには
 ハンバーグやカニクリームコロッケの乗った子供向けのピラフがあって
 確かにあれはごちそうだった。
 
・小学校高学年だったか。日本の作家の作品。
 主人公の聡明な少年は港町で母一人子一人貧しい生活を送っている。
 その前後は全く思い出せないが、ある場面で少年は雑貨屋だったか魚屋だったかに行って
 マヨネーズを30円分くださいと言う。小皿を差し出す。
 一本丸ごと買う余裕はなくて、量り売りでしか買うことができない。
 店のおかみさんは事情を察しているのでいつも通り小皿にちょこんとマヨネーズを乗せる。
 それを語り手の同級生の女の子が見ていた。
 貧しいってそういうことか、と僕は思った。
 1回につき30円というのを10回我慢すれば1本買えるじゃないか、ということを考えた。
 しかしそういうことじゃないんだよな。
 小皿の端にすこしだけつけてもらったマヨネーズがなんだかとてもおいしそうだった。
 そのツンとくる匂いを感じた。
 
・小学校の高学年か中学一年生の頃に読んだ詩。
 年配の男性が作者だった。思い出せないが、有名な方なのだと思う。
 妻に先立たれて息子と暮らしているようだ。
 家事は皆男性が一人で行っている。夜ごはんもつくる。
 その一行の中にネギをきざみ、卵をかき混ぜるとあった。
 何をつくるんだろうな、と気になった。
 このふたつだけだったら僕の母がよくつくっていたかきたま味噌汁だろうか。
 これは食材のほんの一部分でもっと豪華なものをつくるのかもしれない。
 いや、そんな明るい感じの詩ではなかったな。
 家事も仕事も抱えた男性が一人きりで行う簡単な手料理。
 かといってインスタントラーメンでやりすごしたりもしない。
 カラッとした生活の悲喜こもごもがあった。
 
読み返してみると僕は食べ物のことしか覚えてないんだな……
妻に聞いたところでは各都道府県に教科書センターがあって
資料として保存しているみたいだけど。
40年近く前だともう残ってないかな。
機会があったら探してみたいが。
あるいは誰か物持ちのいい人が取っておいたりしてないか。