あの人の1枚

同世代の人の部屋にたまたま入る機会があって
その人の2、3枚だけ持っているCDが本棚の隅や机の上に置いてある。
どういうのを持ってんだろう? とそれとなく見てみるのが好きだった。
 
普通の人ってCDをどれぐらい持ってるものなのか。
10枚か20枚ってとこか。
いや、それでも多い方だろう。4枚か5枚。
繰り返して聞いて、それで数年したら売ってしまう。
よけいなものを増やさない。
 
妙に印象に残っているCDがいくつかある。
へー、こういうの持ってんだ、意外だなと。
これが Globe や安室奈美恵だと記憶に残らない。
売れてて皆が聞いてるから、買ったもの。
 
中学時代のある友人は爆風スランプの『HIGH LANDER』だった。
「月光」「RUNNER」「ひどく暑かった日のラヴソング」が入っている
当時かなり売れた(と思われる)アルバム。
爆風スランプはこの頃テレビに出まくっていた。
これを覚えているのは友達の家にあるCDというのを始めて目にしたからだと思う。
 
何がきっかけだったのか、中学時代のクラスメイトの
ちょっとヤンキー系のきれいな女の子の部屋に入ったことがある。
男の子は僕だけではなく他に何人かいたと思う。
何を話したのかは覚えていない。
大人っぽい部屋だったけど、何を見てそう思ったのかは思い出せない。
年上の兄弟がいたからなのか、TOTO『IV』があった。あの赤いジャケットの。
これも当時洋楽のベストセラーだった。
その頃僕はまだビートルズぐらいしか聞いてなかったけど、その名前は知っていた。
「Africa」もよくテレビでかかっていた。
洋楽に興味を持ち始めた頃にTOTO『IV』を見かけてしまったがゆえに
それだけが印象に残ってしまったのだろう。
なんだかもったいない気がする。
もちろん、TOTOを聞くときに何回かに一回かはあの子のことを思い出す。
 
大学以後、他人の部屋に入ることなんてほとんどなかった。
大学で寮生活を送っているときの四人部屋が最後だったか。
同じ部屋の先輩は軽音に入ってたけど音楽の趣味は最後までわからず。
ハードロックらしかったんだけど……
よく一緒に麻雀を打って、卒業後も何度か合コンに誘ってもらってるけど。
一枚だけあったのが Jesus Jones『Doubt』
これも時代の一枚ですよね。『ツルモク独身寮』に出てきたり。
これが机の周りの絨毯に転がっていた。
掃除なんてしないので埃だらけで、ケースを開けてみたらボワーッと。
試しにくぐもったCDをプレイヤーにかけてみたら普通に再生できて驚いた。
逆にきれいに見えるけど音飛びするCDって何が原因なのだろうと不思議に思った。
 
同じ階の同期は一見真面目なやつなんだけど、……という。
当時は彼らの中で一番地味なアルバムだと思ったけど
今は最高傑作なんじゃないかと。
ベストアルバム以外ではこのアルバムだけ繰り返し聞く。
前にも書いたが、「開店休業」「看護婦ロック」「立秋」と阿部ビーの曲がいい。
なんでこの一枚なのか聞いたように思うけど、いい感じにはぐらかされたような。
麻雀のBGMに借りたこともあったかな。