『映画音楽大全集』

自分の死期が近いのか。
そこまではいかなくとも、少なくとも人生の折り返し地点は過ぎたのか。
最近、昔懐かしいもの、20代半ばまでに出会ったものへの郷愁の念が強い。
新しいものに出会うよりも、昔馴染みの方が気楽でいい。
高校の頃に初めて読んだ rockin'on をまた読み返してみたいとか。
一週間休みが取れたらドラクエがやりたいとか。
次ぎ青森に帰ったらいつものあの店で食べようとか。
 
音楽も、そう。
洋楽を聞き始めた頃の The Beatles / Led Zeppelin / The Clash には勝てない。
ブルーハーツレベッカも自分の中で永遠。
 
音楽を聞くようになった頃に入手して何度も聞いたんだけど
心の中の置き所に困ってしまった。
だけどこれまでの人生で何度も思い出してきた。
そういう類のものがある。 
 
今、手元に『映画音楽大全集』という1枚のCDがある。
昨晩思い出してCDラックの奥から探し出した。
中学生の修学旅行で秋葉原に行ったときにふらっと入った店で買った。
80年代後半。その頃はレコードよりもCDよりもカセットテープの方が多かった。
人生で最初に買ったCD10枚のうちに入ると思う。
なぜそれを買ったかというと
音楽と同じぐらい、映画に興味があった頃だからだろう。
 
冒頭から挙げていくと
「ラスト・エンペラー~テーマ」「ラ・バンバ
といったラインナップ。
「第三の男」や「エデンの東」もあれば
トップ・ガン~デンジャー・ゾーン」も「スタンド・バイ・ミー」もある。
その頃の映画音楽と言えば、という曲を集めている。
さすが大全集の名に恥じない。
 
それが、青森に帰って、ミニコンポで聞いてがっかりする。
なんだ、オリジナルの演奏じゃないのか。バッタもんか。
よく見るとケースの裏の曲目の下に小さく、
演奏:スクリーン・ミュージック・オーケストラとある。
小学生の時に、C-C-B のカセットテープが安く売られている!
と見つけて小遣いを貯めて買ったらカラオケだった、
あのときの気持ちに近い。
 
自分の中で収まりが悪くて、CD棚のいつも隅の奥の方に押し込まれていた。
しかし、名画のテーマ曲だけあってどれも曲がいい。
結局は何度も聞くことになった。
ことあるごとにそのメロディーを思い出した。
「ラスト・エンペラー~テーマ」はさすがに、
その後すぐレンタルCDで聞いた坂本教授のサントラの方が重厚感があっていい。
ヴォーカルのない「ラ・バンバ」よりも、Los Lobos の演奏の方がいい。
でも「カラー・パープル~メイン・タイトル」はこちらの方が耳に馴染みすぎてて、
それから20年ぐらい後にクインシー・ジョーンズによるサントラを聞いたときに
違和感を覚えてしまった。
 
昨晩20年ぶりぐらいにCDトレイにセットして、とても懐かしい気持ちになった。
印象的なメロディの数々。心の中で繰り返し聞いたものと寸分たがわない。
老年に差し掛かって身の回りを整理したとき、
最後の最後まで手元に残すのはこういうCDじゃないか。
 
1988年に発売されたもののようだ。
アポロン音楽工業から出ていた。
スクリーン・ミュージック・オーケストラも無名の
スタジオミュージシャンたちの集まりなんだろうな。
このアルバムを演奏したことは覚えているだろうか。