ままごと

よく晴れた土曜の昼、スーパーへ。
近所の公園に差し掛かると女の子三人が芝生に座って何かを囲んでいる。
ままごとか。今の子供もやるんだな。
 
引っ込み思案でいくじなしだった僕は
幼稚園の庭を走り回って遊ぶなんてことは先生に言われたとき以外にほとんどなく、
いつも同じ女の子とままごとをしていた。
まさこちゃんと言った。飽きもせず、毎日、ままごとだった。
何をしていたのかは忘れてしまった。
滑り台の陰に敷物を敷いて外で、といった情景だけを覚えている。
でもそこに何があったのか。
人形やおもちゃの食器、積み木の類があったのかどうか。
丸顔でめのぱっちりしたまさこちゃんの顔はうっすらと記憶にある。
 
まさこちゃんは一つ下だった。
僕が小学校に上がって、その後会うことはなかった。
青森市の本町のスナック街からむつ市に引っ越して、
父が亡くなって青森市に戻ったけど全然別な場所に住んで。
母はどういうつながりがあったのか、時々、
まさこちゃんは今どこどこでどうしてるという話をした。
でも僕は小学校の4年生や5年生だから
フーンと言うだけで特に興味を持たなかった。
そのうちに母も話題に出すことはなくなった。
 
今どこでどうしているのだろうと思う。
まだ青森市にいるのだろうか。
それとも札幌や仙台に出ただろうか。あるいは東京へ。
一番ありそうなのは青森県内だけど八戸や弘前にいるというものか。
 
結婚して娘がいたら、ままごとをして遊ぶこともあるかもしれない。
そんな娘を見て、幼稚園の時にままごとをしたひとつ上の男の子は今どうしているだろう、
そんなことを思う日もあるのかもしれない。
 
まさこちゃんに限らず、
二度と会うことのない人のことを時々ふと思い出す。