クラウドファンディング

阿蘇山の火口付近に建っていた西巌殿寺奥之院は明治22年に今の場所に建てられ、
度重なる噴火に際してもびくともしなかったのが
2016年の熊本地震で損壊、その後の台風などの自然災害で倒壊してしまった。
 
住職の方とは妻が熊本に住んでいた頃から親しく、
今から8年か9年前になるか、
僕が初めて熊本を訪ねた際にどうしても阿蘇山を見てほしいとドライブに出かけ、
この奥之院で縁結びのほら貝を吹いてもらった。
 
再建に向かってすぐにも動き出すというのはなかなか難しく、
いろいろと整って具体化し始めたのは昨年か一昨年のことか。
熊本地震の直後はまずは民家の修復のため木材を優先すべきであったし、
工務店で働く人たちもそちらにかかりきりだった。
東京オリンピックによる人手不足も遠く熊本に及んでいた。
 
今年になって再建資金をクラウドファンディングで集めるというので僕も妻も応募した。
目標額には達しなかったが、かなりの額となった。
そのお礼の品が水曜、木曜と届いた。
僕はマグカップ。妻は1ランク上の御朱印帳。
マグカップ阿蘇山に佇む奥の院と修行者が、
阿蘇を思い起こさせる鮮やかなグリーンで描かれていた。
御朱印帳もしっかりとした板で両端を挟まれた立派なものだった。
 
思えば、クラウドファンディングに申し込んだのはこれが初めてか。
もう何年も前にクラファンが定着した世の中にもかかわらず。
アンテナを張って面白いアイデア、勢いのあるベンチャーを探すという柄ではないし、
身の回りで事業を始めるという人もない。
自分は今も昔もそういうところに住んでいるのだな。
今回の奥の院のことがなかったら
一生クラウドファンディングというものに縁がなかったかもしれない。
 
もちろん、自分から資金を集めて何かを始めることもないだろう。
地味というか、普通というか。
いや、いつかそっちの方が少数派となるのか。