先週買ったCD #120:2023/01/30-2023/02/05

2023/01/30: diskunion.net
Varelie Carter 「The Way It Is / Find A River」 \2450
Blur 「Park Life」 \2550
 
2023/01/31: tower.jp
Oingo Boingo 「Boi-Ngo (2022 Remastered & Expanded Edtion)」 (\2871)
タワレコのポイントで
 
2023/02/01: tower.jp
Tujiko Noriko 「Crepuscule I&II」 \3960
GEZAN with Million Wish Collective 「あのち」 \3300
Rachael & Vilray 「I Love A Love Song!」 \2511
Oingo Boingo 「Dart At The End Of The Tunnel  (2022 Remastered & Expanded Edtion)」 \2871
 
2023/02/01: www.amazon.co.jp
To Rococo Rot 「Taken From Vinyl」 \780
 
2023/02/02: TowerRecords 光が丘店
Sam Smith 「Grolia」 (\2860)
タワレコのポイントで
 
2023/02/03: diskunion.net
Cabaret Voltaire 「#7885 Electropunk to Technopop」 \1900
Cabaret Voltaire 「Colours」 \580
Cabaret Voltaire 「Plasticity」 \880 
Cabaret Voltaire 「International Language」 \800
Cabaret Voltaire 「The Conversation」 \1100
 
2023/02/04: Traffic Store
Cabaret Voltaire 「Micro-phonies」 \2200
 
2023/02/04: DiskUnion 神保町店
Alice Babs 「Music with a Jazz Flavour」 \612
(Soundtracks) 「Gloomy Sunday」 \252
 
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Cabaret Voltaire 「The Conversation」
 
何周か回って今、無性にこれが聞きたいと自分の中で盛り上がることがある。
DiskUnion / Amazon / メルカリ / ヤフオク / HMV ......
中古で安く買えるのを探して買い漁る。
 
先週・先々週来てたのが Cabaret Voltaire
今思うとなんでそうなったんだっけ? というのがよくわからず。
とりあえず、DiskUnion のサイトで5枚中古で買って、
買い逃していた紙ジャケを2枚、メーカーのサイトで直接オーダー。
iPhone から外していたアルバムも入れ直した。
 
Throbbing Gristle らと並んで
70年代後半~80年台初頭までの
イギリスのノイズ、インダストリアルなロックの創始者にして道標であり続けた。
実験的な音、アートな音が
パンクムーヴメントに触発されてより研ぎ澄まされていったというのも似ている。
パンクがニューウェーヴに変わることで一つの役目を終え、
Throbbing Gristle は解散し、
Cabaret Voltaire はエレクトロなダンスミュージックへと方向性を変えた。
(音響面の策士、クリス・ワトソンが脱退したというのも大きいだろうが)
 
僕も若いころはノイズミュージックとして Cabaret Voltaire を聞いていた。
「Mix-Up」(1979)はなぜか大学の生協の500円投げ売りコーナーで見つけた。
「Three Mantras」(1980)は探し続けてもなかなか見つからなかった。
ようやく池袋の HMV で見つけた時、どれだけ嬉しかったことか。
”Western Msntra”と”Eastern Mantra”の2曲のみ。
それこそマントラの詠唱のような
民族音楽っぽいコラージュがループして得体のしれない
世界の果てのようなサウンドスケープへと至る。
僕自身はやはりこれが最高傑作だと思う。
 
高校の頃から、聞いてみたいと思っていた。
Throbbing GristleCabaret Voltaire も Mute レーベルに属していたので
ちょうどそのころ Mute の日本での配給がアルファレコードになったことで
ボックスセットという形で旧譜が一気に再発された。
ひとつのセットに代表作が3枚から4枚入って5,000円か6,000円ぐらい?
(同様に Can も 再発された。Depeche Mode はレア音源を集めたものだった)
しかしこれ、痛しかゆしで高校生の小遣いでは到底買えない。
なんで一枚ずつ再発してくれなかったのか。
というか一枚ずつだと売れない、マニア向けにまとめて売るか、という戦略だったのだろう。
これらのバンドは今と違ってそこまで再評価されていなかったと思う。
 
僕はお年玉をやりくりして、どうしても聞いてみたかった
Can「Future Days」(1972)の入ったボックスセットと
なぜか単発で再発された Throbbing Gristle のベストアルバムを買うのが精いっぱい。
ボックスセットだけの Cabaret Voltaire は断念した。
 
そんなときに、Cabaret Voltaire が新譜を出すという。
「Body And Soul」(1971)
rockin'on のディスクレビューでは山崎洋一郎氏が
学生時代、キャブスを爆音でかけていたら
家族が部屋に入ってこなかったという前置きをしつつ、
時代の流れか彼らもハウスに鞍替えした、というようなことを書いていた。
総じて評価は低かった。
それでも、あの Cabare Voltaire だとなけなしの小遣いで買いに行った。
家に帰って愕然とする。
ノイズミュージックでもなんでもなく、どこにでもありそうなハウスミュージックだった。
明るくハッピーなものではなく、暗くて攻撃的な雰囲気は残しつつも。
2・3回聞いただけで売ってしまった。
 
今なら「Body And Soul」が過渡期の作品だということはわかっている。
80年代半ばの、エレクトロに接近した
「The Crackdown」(1983)
「Micro-Phonies」(1984
「The Covenant, The Sword, and the Arm of the Lord」 (1985)
「Drinking Gasoline」(1985)の4作が
彼らにしか生み出せないダンスミュージックとして再評価され、
90年代前半の「Colours」(1992)「Plasticity」(1992)や
「International Language」(1993)「The Conversation」(1994)は
テクノの隠れた名盤とされている。
 
これらの作品をちゃんと聞いてみたいと思った。
特に90年代のは「Body And Soul」以外聞いたことがなかったので
上記の4枚を DiskUnion のサイトでまとめて買った。
輸入盤の中古で1枚580円とか880円とかだった。
(70年代末から80年代半ばまでのベスト盤も合わせて。
 国内盤帯付だったのでさすがにこちらは1,900円だった)
 
「Colours」「Plasticity」「International Language」「The Conversation」
と順を追って聞いてみた。
ハウスとかテクノとかいう以前にプリミティブなエレクトロ・ダンスミュージック。
手探りのノイズミュージックから始まったのがどこかわかる音。
隙間風のように、ダークサイドからの不吉な雰囲気が絶えず忍び寄ってくる。
享楽的ではないし、狂気に満ちているのでもない。退廃的なのでもない。
ただただ、奈落の底が見える。
いや、”聞く”ためのダンスミュージックとしてこれはよくできていると思う。
全体的に暗い音の中にカラフルな要素を差し込むのがうまい。
メロディがどうこうではなく、いくつかの音を重ねたときの風景づくりがうまい。
これは確かに、ちょっとやそっとのキャリアではできない。
 
この4枚は年を追うごとに少しずつ、アンビエントな方向に進んでいった。
前面に出ていたダンスビートが少しずつ後景に下がっていった。
その分ダークな虚無感が増していく。
「The Conversation」にてそれは極まり、ビートのないアンビエント
Coil の音にかなり近づいていた。
彼らの中でひとつの極北に到達した。
2枚組の2枚目には50分を超える大曲が収録され、
かつてのノイズ時代を思わせるようなサンプリングコラージュから成り立っていた。
 
このアルバムで一度、Cabaret Voltaire は解散する。
2014年、中心人物だったリチャード・H・カークのソロプロジェクトとして再開。
精力的に過去の作品の再発やライヴ音源の発掘を進めている。