『舞いあがれ!』に最近出てくるあの人について

朝ドラ、『舞いあがれ!』も残り1か月半。
後半に入ってだいぶ失速したように思う。
大阪の町工場でネジをつくるというのが悪いとは言わないが、
前半の浪花バードマンで鳥人間コンテスト
和製トップガンのようだった航空大学校
華々しかっただけに、動きが止まってしまったように感じる。
 
いや、その間に父が亡くなり、兄が捕まりと家族の関係性は大きく変わった。
とはいえ、舞台がひとところに固定されたことで
前半の疾走感が失われてしまった。
実際にはそんなことはなくても、十分動いていても、
相対的にもたついているように感じてしまう。
 
それはいいとして。
先週から登場している、主人公の恋敵となった女性の存在感が
どんどん気持ち悪い方向に大きくなってきている。
もちろん脚本も演出も意図してのこと。
 
主人公の幼馴染は歌人として賞を獲り、歌集を出すことになったものの
編集者とうまくいかずにいる。
そこに現れたのがファンだという女性。
自分も短歌を書くので読んで欲しいとおずおずしていたのが、
どんどんその生活に入り込んでくる。
四六時中側にいるようになり、帰ったらと言われてもなんだかんだ言って帰らない。
今日の放送に至ってはよく見るとエプロンまで着ていた。
そして幼馴染のもとを訪れた主人公に対して
短歌を作る邪魔になるからここには来ないで欲しい、とまで言い放った。
 
見ててぞっとする。幼馴染にとって疫病神としか思えない。
というか、ここまで怖いキャラクターを作ったのは偉いな、と感心した。
 
その女性は家庭に恵まれず孤独な生い立ちで、短歌に興味を持つ。
その時出会ったのが幼馴染の短歌なのであるという。
幼馴染の孤独に引き込まれ、彼の孤独と私の孤独が通じ合う、
彼の短歌のよさは私にしかわからない、というようなことも言った。
 
でもなあ。
あなたの孤独とわたしの孤独が分かり合えるなんてことはないし、
それができたらもはや孤独ではないと思う。
少なくとも恋の小道具に使うものではない。
本当の孤独とは、壊れてしまってもはや引き返せないものだ。
 
……などなど考えてしまい、結局のところ僕は
脚本家と演出の掌の上で転がされてしまっている。
徹底的に嫌な人物ではなく、悪意はない。
彼女なりの人生の過ごし方を経てそういう一面をもった、というだけだ。
いやー、朝ドラとしては主人公と幼馴染が結ばれることになるんだろうけど、
この恋敵が敗れて目の前から去る時にはそうとう後味悪いことになるんじゃないかな。
 
初めて見る役者だけど、彼女も相当うまいんだろうな。
ものすごく微妙なところを的確に突いた演技で、絶妙な存在感を放っている。
 
これ、前半の疾走感では描けないドロドロさであって
もしかしてまさか彼女の登場のために展開を遅くしてるんじゃないかとすら思う。
 
僕個人としては主人公はまっすぐパイロットになって
ドラマとしてもよりスケールの大きなところを見たかったけど。