『金子浩久 のBookCarLifeな冒険譚』

続き。
トークイベントは金子さんの著作
ユーラシア大陸横断 1万5000キロ」
「10年10万キロストーリー」
クラシックカー屋一代記」を縦軸として語りつつ
金子さんの本棚に選んだ本を横軸としてさしはさむ形で進んでいった。
 
ちなみに、こういうラインナップ。
店頭で販売できるように古書や新刊でできるだけ揃えて、
中古市場にも出回っていないものは金子さんに持ってきてもらった。
「ヨーロッパ退屈日記」伊丹十三
「宇宙からの帰還」立花 隆
「日本凡人伝」猪瀬直樹
「冒険手帳」谷口尚規
「森の生活」ヘンリー・D・ソーロー
「星を継ぐもの」JPホーガン
「地の漂流者たち」沢木耕太郎
「サハラに死す」上温湯隆
「馬車が買いたい」鹿島茂
「東京のロビンソンクルーソー小林信彦
「マイクハマーへ伝言」矢作俊彦
「爆走オデッセイ」丸山健二
「赤いボディ、黒い屋根に2ドア」片岡義男
「ロンドンー東京5万キロ」辻 豊
 
ユーラシア大陸横断 1万5000キロ」からは
日本での事前準備も大変だったし、
渡ってからのトヨタカルディナ」でのユーラシア大陸横断の道中も当然大変だったと。
先々でガソリンを給油するにしても、
2001年でインターネットがそこまで普及していない。
どこにガソリンスタンドがあるかというデータはないし、製油所に行けばいいというものでもない。
何とか見つけては先に進むという日々。
金子さんは『答えは探すものではなく、つくるもの』なのだという哲学に至る。
 
その道々、検問所ばかりで袖の下を求められ、
東側の人たちはステッカー一枚で喜んでいたのが
西側に進んでいけばいくほどすれてきて渡す金額も大きくなっていく。
だけど払えない額でもない。
プリペイドカードにして事前払込みにしてくれたら楽だった、時間のロスがなくてよかったなあと。
笑いが起きて、今なら袖の下アプリでしょうね、という声が会場から。
 
本棚の本の話だと
「10年10万キロストーリー」はアメリカのニュージャーナリズムの影響受けていて、
当時読んだ本だと、立花隆「宇宙からの帰還」など。
日本人は私小説という特殊なジャンルを生み出したが、
自分は私ノンフィクションだと思って書いている。
だから単に取材した方や車の話だけではなく、なぜ会いに行ったのかというところから始まる。
自分を入れていく。
だけど、伝説的なドライバーであるとか、
語られるべきことの多い有名な人に会う時は自分というものを入れる余地はなくなる。
ニューじゃなリズムからは固有名詞や数字を大事にする、
『fact finding』誰も知らないことを見つけるのが書くということだ、ということも学んだ。
 
片岡義男日系人だったのでアメリカの乾いた、簡潔な文体を自然に身に着けていた。
アメリカの翻訳小説を日本語の文体で書いていた。
大藪春彦は80年代、あんなのはハードボイルドではないと文壇から軽視されていたが、
今思うと昭和の国民的作家だった。
などなど。
 
最後は会場の方を巻き込んでの日本にEVは普及するか? の議論。
モーターショーでは中国のEVの会社が50も出てきて知らないところばかり。
10年前は中国の会社がトヨタや欧米の会社を追いかけていたのが、
今や追い越してしまう局面も出てきた。
しかし、日本の車社会の未来はEVではないという。
進化が早いので売るにも中古市場で値がつかないということに気づいてきて、
環境先進国の多いヨーロッパでも最近反発的なムードが出てきた。
そもそもそもそも日本は走らせる電気をどこで作るのか、原発なのかという議論となる。
例えばノルウェーノルウェー水力発電が9割なので、EV化が進んでいる。
原発をやめたドイツはフランスから買える。
しかし日本は周りの国から電気を買うことができない。
 
じゃあ、ソーラーパネルの車は? というと今のところ一回の充電で最大20kmまで。
その距離も技術の進化により今後飛躍的に伸びていくだろうけど、
冬のヨーロッパでは使えない。
そもそも地下駐車場や屋内運動場に停められない、という問題が。
 
イギリスのクルマにはなぜ助手席がないのか?
『4way stop』に現れるアメリカの社会の在り方。
クルマはやがて馬車に戻る?
いろんな面白い話が出てきて、90分はあっという間。
 
「冒険手帳」は当時のオリジナルと復刻版の文庫、両方売れてしまった。
他、何冊か来場者に買っていただいた。
 
近くの「カスタネット」で2次会。スパークリングワインで乾杯。
金子さんには『勝進の真似がしたい』と謝礼が消えてしまうぐらいたくさん出してもらった。
なんだか申し訳ないことになった。
金子さんの人柄というかその優しさと漢気に触れた夜だった。
 
金子さんの「ユーラシア大陸横断 1万5000キロ」は新刊で、
「10年10万キロストーリー」は中古で、青熊書店で扱っています!