初めての京都 その6(2日目・金閣寺)

金閣寺の前で降りる。
この頃また雪が降り出す。しかも強く、大粒の雨のように降ってくる。
とにかく中に入る。
・・・中に入って圧倒される。
「なんだこりゃ」と心の中で「!」と「?」が4つ5つグルグルと浮かび上がる。
全身金ピカの舎利殿のなんとも奇妙な存在感。
これぞジャパネスク。外国人もさぞ喜ぶことだろう。
というかこれすごいね。素直に「すげー」と思った。
いったいなんのためにこんなものを作ったのだろう、建てたのだろうという建物は
世界のみならず日本にもたくさんあると思うが、その最たるものではないか。
これは見てよかった。バカにできない。
これを見ずして死んでたら日本人として不適格の烙印を押されるところだった。
いや、ほんと金箔で覆われたちんまりとした建物が雪の降る中を鈍く光り輝いていて、
その周りはその当時の権力者(足利義満)が贅を凝らして作った日本庭園なわけでしょう。
「はー・・・」と驚嘆するしかない光景。
銀閣寺にはどうしても「せせこまさ」のようなものを感じてしまったんだけど
こっちは(悪く言えば)「大きいことはいいことだ」みたいなところがあるから
観覧コースを歩いていても銀閣寺のような「間を縫って」という感覚は無く、
むしろ近くをあるかせてくれてありがとうぐらいの気持ちになる。
舎利殿と池と茶室ぐらいしかないという潔さがいい。
僕がいつの日か外国人を日本に案内することがあったら、是非とも金閣寺に連れてきたい。
「これが日本だ!」と。
アートなのは確かに銀閣寺かもしれない。
だけど観光地として物見遊山で訪れるならどうしたって金閣寺でしょう。


雪も上がり、またバスに乗る。
見たかったものは見終わって、後は適当に時間が過ごせればいいかなと思う。
12時過ぎ。四条か三条の河原町の辺りを歩いて、最後は駅前に戻ればいい。
とりあえずバスに乗ろうかと停留場に行ってみたら
とんでもなく人が群がっていてバスを待っていた。
何行きのバスに乗るべきなのかよくわからず、しばらく待っていたらバスが来て、
京都駅行きだったので「じゃあこれなのだろう」と思って乗ってみたらハズレ。
思いっきり西寄りに走って、四条だというので降りてみても繁華街らしき気配なし。
普通に大都市の郊外。「西院」という地区だということがわかった。
地図を見たらそのままひたすらまっすぐ進んでいったら
それでも烏丸や河原町の四条に続いているようだ。当たり前か。
せっかくだからテクテクと歩いてみる。
途中立ち寄ってみたいと思う場所は無く、ただひたすら無心になって歩く。
バスも走ってるんだけどもういいやと思う。
どっかまたとんでもない方向に乗せられたりして。もうこれ以上はこりごり。
実は四条でどうしても行きたい場所があって、
それは観光名所ではなくて「天周」という天ぷら屋。
2冊あった「ミーツ」の両方にかき揚丼が載っていて、
そのうちの1つは無茶苦茶大きくドーンと写真が載っていた。
これがまたかき揚が丼から思いっきりはみ出していて、
どうやって食うんだ!?と笑いたくなるようなすごさ。
どうしても食べてみたくなる。


30分かけて歩いてようやく繁華街に。昨日の夜もジンと歩いたな。
ジュンク堂の本屋があって、もう1個の大丸があって(どういう関係なのだろう?)。
先斗町の入口を通り過ぎて、鴨川を渡る。
「これが鴨川かあ」と思う。いたって普通の川なんだけど、なんだか枯れた雰囲気がある。
つじあやのが鴨川のほとりで1人ウクレレを持って歌っていたという逸話が有名か。
京都出身のロックミュージシャンのインタビューを読むと必ず鴨川が出てくるような気がする。
川を渡った先は祇園祇園精舎の金の声、祇園祭祇園
今回僕は京都の上っ面だけを駆け足で眺めたようなもんだけど、
次来るときは日本的情緒を味わうためにまずはここ祇園を自分の足で歩き回ってみたい。


「天周」は祇園に入ってすぐのところにある。
見つけたときは「よし!!」と思ったのであるが、
残念なことに「かき揚丼売り切れました」の張り紙が。人気の品なのだろう。
どうしようかと迷っていたところに年配の会社役員っぽい人が先に入っていく。
なんかまだ他にメニューがあるんだろうな。
一般庶民が入ってはいけないような格式高そうな店の構えに一瞬ひるむものの意を決して入っていく。
カウンターの席に通される。
かき揚丼がなくなると穴子天丼、大海老天丼、ミックスの天丼しかない。
僕はミックス天丼を注文する。
カウンターの中には熱した油の入った鍋が2つ。温度が違うってことか。
穴子を頼んでる人が多く、入ってくるなり料理人の方から話しかけてくるような常連客も
メニューを選ぶことの無いまま穴子天丼を出されていた。
揚げ終った穴子がトレーの中に移されると
たれの入った小さい鍋に一枚ずつジャバッと無造作に投げ入れられ
そのままビシャッと御飯の入った器に乗せられる。
このたれが絶品。甘すぎず辛すぎず絶妙な味わい。
(僕は普段どこで天丼を食べてもたれが甘ったるく感じられる)
天ぷらのホクホク感は言わずもがな。
大きな海老を歯で食いちぎると弾けるんですよね。みずみずしさが。
穴子だって衣はサクサクしてて中は身が引き締まってるのに柔らかく。
歩き回った後にグラスでビールを飲むのも心地よく。
来てよかった!心の底からそう思った。
次にまた京都に来たら、絶対もう1度来ます。今度こそかき揚丼食べます。