夏を取り戻す、海水浴に行く(その3)

何度か泳いだり、ビーチバレーをしたり、
というのを繰り返した後で海の家に戻って昼食。
一番混んでいた時間帯に入ってしまった。
海の家の食事って「まずい」とも言われるが、僕は好き。
味の良し悪しの問題じゃなくて、海の家で食べてるってこと自体がなんだか楽しい。
僕は、生ビール、げそバター、カツ丼を頼む。(海ではずっと飲み続け)
ビールは来てもつまみのげそバターが来ないので、フランクフルトを追加。
他の人たちが食べているカレーライスや焼きソバがどうしても食べたくなって、
カツ丼を食べ終わった後、さらにカレーライスも追加。
カレーはまあ、平日に都心で食ったらイマイチなものなんだけど
海の家で食べるとものすごくおいしく感じられる。不思議。
他の3人はカキ氷を食べていたけど、さすがに僕は腹いっぱいだったのでやめておく。


海の家のおばちゃんは気さくな人で、あれこれ話しかけてくる。
毎年毎年6月になると海の家を建てて、というのを何十年も続けている。
今年の営業も今週末で終わりなようだ。
「そう、9月2日。いつものダンプお願い。人足は3人ぐらいで」と電話で話しているのを聞いた。
海の家をよく見てみると、柱も屋根も嵌め込んだり、ボルトを締めたりと、組み立て式になっている。
毎年毎年建てては崩して倉庫に入れて、夏が来るとまた一から立て直してを繰り返しているのだろう。


海の家ではどこもバイトの学生みたいなのを何人か雇っている。
一夏住み込み?でバイトするんだろうな。みんな真っ黒に日焼けしている。
男子もいて、女子もいて、一夏のいろんな出会いがあるんだろうなあと思う。
いつか小説に書きたいなあと思う。
僕らのいた海の家で働いていた女の子は肌が真っ白で、
毎日ひたすら日焼け止めを塗っているのだろうか?と気になった。
それとも今日だけ臨時で呼ばれた、おばちゃんの姪っ子とか。
学生たちは夏が終わると大学に戻るんだろうけど、
おばちゃんたちはオフシーズンをどのように過ごしているのだろう?


昼過ぎになると砂浜は「芋を洗うような」大混雑。
朝の閑散とした雰囲気が嘘のよう。
泳いで、ビール飲んで、ビーチバレー、を繰り返す。
誰もいないときにはビニールシートに寝っ転がる。
空が晴れてきて、陽が出てくる。太陽!
(朝に塗った日焼け止めをすっかり解けて流れていることを忘れていて、後で大変な目に遭う)
砂が火傷しそうなぐらいに熱くなる。
波が通って行った後の茶色い砂がキラキラと光る。波飛沫はもっと輝いている。
大勢の人たちがはしゃいで、笑い合って、楽しそうにしている。
夏はこれで終わってしまうのだろうか?
いや、なんだか永遠に続いていくようなものに思えた。
たったこれだけの小さな海水浴場であっても、夏は永遠の出来事のように思えた。


午後3時ごろ、引き上げることにする。
この頃には僕は背中や足が真っ赤になる。ヒリヒリと痛い。
「あんた痛そうだよ、背中がピンク色してるよ」と海の家のおばちゃんにも言われる。
砂でいっぱいのサンダルを脱ぎ、水着も脱ぐ。
日焼け止めを塗り忘れたか、波に洗い落とされた部分が真っ赤になっている。
痛くて痛くてたまらない。。。


車に乗る前に、近くの公園まで歩いて、足やサンダルに付着した砂を洗い流す。
御宿を後にする。また来年来てもいいかな、と思う。


疲れ切った僕は車の中で何度もウトウトする。
SPEEDやラルクを聞く。たわいもない話をする。
来た道を引き返して湾岸道路を通っていたら渋滞に巻き込まれるからと、
東京湾アクアラインを利用するルートに変える。
九十九里浜から千葉県を横に横断して、山道を西へ西へ。
木更津からアクアラインに乗る。右も左も海辺。ひた走る。
海ほたるで休憩。屋上に出て、海を眺める。
夕暮。秋が近付いている証拠にトンボがたくさん飛んでいる。
みんな疲れていたので今日は下まで下りていくことはしない。
たこ焼きを買って食べる。


海ほたるから先はトンネルとなる。
出口を出ると空はすっかり暗くなっている。
羽田空港の側を走る。飛行機が飛んでいる。
大森、大井町の辺りから渋滞に巻き込まれる。
それでもなんとか、19時ごろ後輩の女の子たちをそれぞれの家まで送って、
僕が家に帰りついたのは20時半。
(カーナビの指示する通りに進んでいったらm途中だらけで狭かったり、
 信号がなかなか変わらなかったり、とんでもない道ばかり走って大変だった)


すぐにもベッドに潜り込んでしまいたかったけれど、その前に。
今となってはヒリヒリを通り越して熱を放ち始めた両足を水風呂に浸す。
足のあちこちが間欠泉のようになって次はこっち、その次はあっちと次々に火を噴く。
水に浸してようやく一息つく。
足はこれでよくても今度は背中や腹が痛い。
御宿を出たときには白かった腹も、家に帰った頃にはきれいなサーモンピンクに染まっていた。
水風呂を出てベッドに横たわるも(もちろん背中がビリビリと痛い)すぐには眠れず。
それでも体の疲労が勝ったのか、いつのまにか眠りの底へ。
目が覚める。・・・もう朝?と思ったら全然違ってて、
先ほど布団に身を投げ出してから1時間しか経過していなかった。
ぞっとした気持ちになる。
足が燃えるように痛むので再度水風呂へ。
足を浸す。本を読みながら、長いこと浸かる。


これが功を奏したのか、次に横たわったら目覚めたのは翌朝。
でも足も背中も腹も痛いまま。
突っ張ってごわごわして、とにかく痛い。色も真っ赤のまま。
一晩ぐらいじゃどうにもならないか、とぐったりした気持ちになる。
今日が日曜でよかった。
これで会社となったら仕事にならない、どころじゃなくて、外に出られない。
スーツなんて着てられない。
10時になるのを待って駅前の薬局に行って、スプレー式の、日焼け後のローションを買う。
高いのを買ったら効果あるのではないかと一番値段の張るものを。
家に帰ってさっそく吹き付ける。
効いてるんだか、効いてないんだか。頼むから月曜には収まっていてくれ。
(寝てる間、ときどき目を覚ましかけて寝返りを打ちたくなったのだが、
 痛くて寝返りが打てない。拷問に近い一晩だった)


そんなわけで日曜は何もせず、何もできず。何もする気になれず。
日焼け止めではなくて、逆に日焼けオイルを塗ったらどうなるのだろう?
この僕も日に焼けるだろうか?と思い試してみたくなるのだが、
日焼け止めを塗っても真っ赤になって痛い思いをするのだから
日焼けオイルを塗ったら皮膚が壊れて、ただれて、
大変なことになってしまうのではないかと怖くなる。
どうなのだろう?


幸か不幸か腕と顔は全然日に焼けてない。
なので僕が海に行ったということは誰からも悟られず。


とりあえずこれで今年の夏は終わった。
遅れてきて、最後に間に合った。