東京カレー屋巡り その3

カレー屋巡りのさらに続き。(不定期連載みたいなもんだね)
ひたすら、神保町で食べ歩く。

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10月5日(水) 神保町「共栄堂」
チキンカレー(ライス大盛り) ¥1150 ★★★★★


神保町の駅からすぐ近く。地下に入る。
スマトラカレーの店として有名であるが、正直スマトラって言ってもピンと来ない。
どこ?「インドネシア近辺のどこか」でよかったっけ?
スマトラカレー」ともなるとさらによくわからず。
そもそもあの辺りにカレーはあるのか?
様々な香辛料はあるとして、彼らはカレーというものを食文化として持っているのか?
こういう話をしているとやがて「アジアの誰も彼もがカレーを食っているのかどうか」ってことになる。
実際どうなんだろう?ミャンマーカンボジアのカレーって普段聞かない。
ミャンマー料理の店に行けばありそうだけど。
っていうかそもそも「じゃあカレーの定義って何?」なんてことになるんだよね。
美味しんぼ」にて語られていたようにも思うが、どうにも思い出せない。
辛い汁をご飯にかければカレーライスと呼んでいいのか?いや、それは違う。
「カレー」と言って思い浮かぶイメージは人の数だけ多々あって
それでも多くの人々の間で核となるものは共有されているんだけど、
その境界線となると思いっきりぼやけているように思う。
不思議な、というか深遠な食べ物である。


なんてことを考えるのは共栄堂のカレーが
「あっ、これってすげえや」と思わせるほど味わい深いカレーで、
カレー好きであれこれ回っててよかったとしみじみ思い至ったから。
それほどうまい。


スマトラカレー」の回答になるのかどうか分からないけど、
普遍的なものかどうか分からないけど、ここのカレーは真っ黒で苦味がある。
コクがあってなおかつまろやか。ご飯との相性はとてもいい。
でもこの味はいったいなんなのだろう?むしろシチューに近いかもしれない。
カレーなんだけどカレーじゃない、だけどカレー以外の何者でもない。
「じゃあカレーってなんなんだろう・・・?」
食べた後、空を見上げながらそんなことを考えてしまった。マジで。


タンカレーがこのご時世もあって1日10食限定と貼り紙されている。
高いけど給料が出たらまた食べに来よう。
「焼きりんご」も気になる。だけどこれ昼の14時以後でないと出てこないみたいだ。


創業は大正13年。
散歩の達人」の神保町特集号では昭和初め、震災復興後の街並みの航空写真が載っていて、
そこに在りし日の共栄堂の店舗もあった。
この頃の時代の人々にとって「スマトラカレー」とはどのように目に映っただろう?

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10月6日(木) 神保町「ALOHA GUMBO」
ドライカレー ¥700 ★★★★☆


名前の通りハワイ系の店。
夜はバーなのかな。なかなかいい雰囲気で夜にまた来てみたいと思った。
ガイドブックを見た僕が「ここに行きたい」と主張すると
上司は「コジャレ系かよ」と渋る。
でも食べた後、「いい店だな」と認めてくれた。


ドライカレーが有名。
あっさりしていて瑞々しく、とても食べやすい。
普通ドライカレーってどろっとしていたり粉っぽかったりして
割と食べにくいものなんだけど。
全然カレーじゃないけどロコモコみたいなのもあって、それもおいしそうだった。


ランチタイムに行ったらア・リーグ地区シリーズってことで
ヤンキースエンゼルスの試合を中継していて、松井が映っていた。

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10月7日(金) 神保町「カーマ」
チキンカレー \850 ★★★★☆


共栄堂・エチオピア・カーマ。この3つがこの界隈の御三家か。
どんなカレー本・カレーサイトにもたいがい載ってる。


その名の通りインドカレーの店。
サラサラのスープ。一口食べただけで完成度が高いのがわかる。
体全体にスーッと澄み渡るような辛さ。
思わず「ふーっ・・・」とため息が出る。
(激辛ってことではないよ)


スパイスが効きまくってるのか昼に食べて夕方までずっと体の中がポカポカしてた。


それにしてもこの辺りのカレー屋ってのは、ほんと「カレー屋」
それ以外の何ものでもなし。多少喫茶店入ってるぐらいか。
小さな店が多くテーブルがいくつかとカウンターだけ。
こじゃれた雰囲気一切無し。
ガイドブックに載ってたり、人から聞いてるから入ってみるんだけど
知らなかったら絶対入ろうとしないだろうなー。
「カーマ」もそう。「ボルツ」も「ボンディ」も、「エチオピア」だってそう。
荻窪の「トマト」だって、入るのに引っ越して7年目にしてこの前が初めてだったもんな。
商売っ気なし。カレーの味、カレーそのもので勝負。
どの店も静かながら沸々と湧き上がる意気込みが店内にうっすらと漂っている。

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10月7日(金) 神保町「キッチン南海
カツカレー \650 ★★☆☆☆


この日は夜もカレー。常駐先のすぐ近くにあっていつも混んでいる。
ここもまたある意味有名。一応看板メニューはカツカレーなんだけど
カレー屋として有名なのではなくて、学生街の雰囲気ある定食屋ってことで知られている。
僕が入ったときは学生よりは近くで働いていると思われるサラリーマンが多かった。
学生時代に神保町・御茶ノ水界隈で過ごして、
就職後もその近くで働いていてたまに懐かしくなって食べに来ている。
もしかしたらそういう強固なサイクルが確立されているのかもしれない。


しょうが焼きとエビフライ、しょうが焼きとクリームコロッケといった
定食のメニューの方が本業で、実はそっちの方がうまいのかもしれない。
カウンターと厨房の境目の台の上には
千切りのキャベツとスパゲティーサラダが盛り付けられた皿がずらりと並んでいて、
せっせせっせと揚げ上がったヒラメのフライやカツを切って乗せてはテーブルに運んでいる。


カレーは大きな鍋でグツグツと煮えていて、
この鍋がまた創業時からずっと使ってるような年季の入ったもの。
カレーのソースが全体的にこびりついている。
もしかしたらずっとずっと作り足ししているのかもしれない。
ここのカレーも共栄堂のように真っ黒。
だけどここのは中濃ソースがご飯にかかっているかのよう。


「うまい」ってことでないんだけど、
常駐期間を終えて竹芝のオフィスに戻って
何ヵ月後かにふらっと土日に神保町を訪れたときには
名だたるカレー屋ではなくて「まんてん」や、ここ「キッチン南海」のような
学生向けB級グルメの店に入りそうな気がする。
初めて食べたのに、なんだか懐かしかったから。その懐かしさを求めて。