コンプレックス

Rockin'on JAPAN の1月号を読んでいたら、
元イエロー・モンキー、今はソロの吉井和哉
9mm Parabellum Bullet の菅原卓郎の対談が載っていた。
片やキャリアの長い大御所、片や活きのいい新人という一見異色の組み合わせだが、
実はお互いがファンであることから実現したようだ。


内容は主にロック談義なんだけど、読んでたらこんなことが書かれていた。
ところどころはしょりながら引用します。

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司会 まずですね、「相手と『ここが似てるかも』と思うところを教えてください」。
   卓郎君の答え、「昔太っていたこと。それにまつわる反動みたいなエネルギー」。
吉井「ああ!あるんだ、やっぱ惹かれあうんだね、そういうのは」
菅原「太ってたんです。で、インタヴュー見てたら、
   吉井さんも『俺は昔、太ってたんだ』と言ってて」
(中略)
菅原「あんなのもうごめんだみたいのがあったりするわけですよ。
   で、そういうコンプレックスみたいなのがエネルギーになってるとこは、
   絶対あるなと思って」
吉井「ちっちゃい時分に太ってた奴は成功するよ」
司会 吉井くんも未だにそういうコンプレックスのエネルギーはある?
吉井「ありますよ。たとえば、やっぱ自分の理想の計画がダメになっちゃうんですよ、太ってると」
(中略)
司会 いろんなことをイメージできなくなっちゃうんだ、かっこいい未来を。

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僕も小さい頃太っていた。その後、痩せた。
なので「ちっちゃい時分に太ってた奴は成功する」という発言を読んで、「おお!」と思った。
なんかわかる、と。


でも、待てよ。と思う。そういう僕自身は何の成功も果たしていない。
どうしてか?
さらに考えた。
・・・デブがコンプレックスになっていなかったからだ。
デブだった過去を活かそうとしていない。


小学校の頃、間食してたわけでもないのになんとなく太って、
中学校の頃、卓球部で運動して、高校の頃、毎日片道1時間かけて自転車通学していたら
いつのまにか痩せていた。
(大学入学当初は身長179cmに対し、体重が60kgを切っていたときもあった)


小学生の時分に「もてたい」とか思ってたことが無いからコンプレックスになるわけがなく。
ロックスターになりたいという願望もなかった。
これではいかんのですよ。
小さい頃に溜め込んだ鬱屈した気持ちが大人になって爆発するっつうの全くないんだよね。
つまり、大から小までトラウマ系全般と無縁。


普通に生きていくならばその方がいいに決まってるけど、
表現者を目指すならば「書く動機がない」ということになりかねない。
あるはあるんだろうけど、薄い。必然性に乏しい。
チクショー!なんかないか?と今、考えた。


そんなとき、「養父から性的虐待を受けてました」という話だと余りにも重すぎる。
悲惨すぎてシャレにならない。
昔太っていて恥ずかしい思いをした、ぐらいがちょうどいい。
告白したら「デブだからダメ」と言われてショックだった、とかそういうの。


なので今、僕はここにタイムマシンがあったら昔の自分に会いに行って
無自覚に太っていた僕をたしなめたい。
けしかけたい。いろんなことを吹き込みたい。
ああ、今ここにタイムマシンがあったなら・・・

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せめて、小さい頃、何かに対して憧れの気持ちを持たせたかった。
幼かった頃に父が死んだ僕は無意識のうちにいろんなことを諦めていたのかもしれない。
普通に生きていければそれでいいのだと。


普通に生きていくために母は僕の見えないところで様々な努力をした。
貧しい暮らしに陥らないようにした。
僕は「普通」に育っていった。
コンプレックスなんか持たなくていいように。


・・・そのことに思い至った今、とても複雑な気持ちになった。