Foo Fighters来日公演

日曜の夕方、高校の友人と Foo Fighters の来日公演を見に行った。
以前にも書いたように思うが、Nirvana世代の僕としては
Foo Fighters ってのは触れるに触れられない存在だった。
聞いてはならない、目にしてはならない。
あれは Nirvana の残骸、過去の亡霊をポップにすることで商品化した、まがいものだ。
僕はずっとそう思ってきた。
Nirvana が無くなってもデイヴ・グロールFoo Fighters で頑張っている、よくやっている
そういう姿がどうしても受け入れられなかった。
もし、ロックの歴史が基本的に「残酷」なものであるならば、
残された2人のメンバーはそれぞれバンドを結成するものの
Nirvanaのような人気を得ることはできず、いつのまにか解散して酒浸りになって野垂れ死に
そういう運命を望むはずだ。
時代を代表する「負」のアイコンに引きずられて、巻き込まれたものは皆、地獄へ道連れ。
悲劇を上塗りして、伝説はより強固なものになっていく。


そんな態度もまあ間違いなわけで。
いい音楽だというならば、フラットに聞いてみるべきだ。
そう思って去年、最新作を買ってみた。
「Echoes, Silence, Patience And Grace」
素直に、「いいじゃん」と思った。「これ、かっこいいじゃん」
現時点でアメリカンロックの最高峰じゃないか。
60年代から00年代に至るまでのアメリカンロックの最良の部分が
充実した演奏の元、この力強い音の1つ1つに具現化している。
あーなんでこれまで聞いてこなかったんだろ?
余計な偏見を抱いていた自分に腹が立つ。
遡って昔のアルバムも買い集めた。
「In Your Honor」の2枚組の存在感は只者ではないし、
「Skin and Bones」は00年代屈指のライブアルバムと言っていいだろう。
なので、友人から「来日公演あるんだけど行く?」って聞かれたとき
「行く行く!!」と即答。
友人は前回の武道館のときも誘ってくれたんだけど、「興味ないし」と断っていた。
今思うともったいないことをしたもんだ。

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16時過ぎに海浜幕張へ。
三井アウトレットパーク」ってのができてるんですね。
去年のサマソニのときにはあったのだろうか?気がつかなかった。
待ち合わせの間、ブラブラとここを見て過ごした。


落ち合って幕張メッセへ。
開場の30分前に着いたのに、整理券の番号順に並ぶ人の長蛇の列。
僕らは500番台で会場の中。会場の外には1500番台の人たちが寒い中待っていた。


開場となってホールの中へ。
手荷物検査を受けて階段を下りていった人たちがダッシュする。
係員から「走らないでください!!」と何度もアナウンスされるが、
こりゃあまあ誰だって走るよね。
僕らは前から5列目ぐらいの位置をキープする。いわゆるモッシュピット。
コインロッカーがいっぱいだったのでクロークに鞄を預けて、開演を待つ。


ステージは黒い幕が張られているだけの簡素なもの。
自信があるんだなあと思った。


18時きっかりに前座のバンドが始まる。
「HiFi Handgrenades」
http://gekirock.com/special/hifihandgrenades/
ジャンルで言えばメロディアス・パンクってとこかな。
ハードでタイトで、ポップ。
僕の周りにいた人たちからは「すげえ」「かっこええ」って声が口々に上がる。
確かにかっこいい。
でも10曲以上やったのかな。前座としては長すぎた・・・
そこからステージセットの設営をやり直して30分以上待たされる。
だったら前座はいらなかったなあ。海浜幕張までは遠いし。


「HiFi Handgrenades」は前座やフェスで見るならちょうどいいけど、
僕としては金払ってまでして見るほどのものではなかった。
こういうバンドっていくらでもいるだろうし。
今から見る Foo Fighters はこの手のメロディアス・パンクを視野に入れた中でも
アメリカン・ロックの最高峰なのだと思うと、やはり小粒なんですよね。

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結構待たされて、ようやく Foo Fighters 登場。
ギターを抱えたデイヴ兄貴が笑顔でステージに現れるともうそれだけで
モッシュピットはギュギュギュギューッと人が押し寄せて
前に詰めるだけ詰めて身動き取れなくなる。
圧死寸前。背が低かったら酸欠で死ぬ。
演奏が始まるとさらに大変なことに。
揺れて飛び跳ねて揉みくちゃになって人波が崩れてうねってうねりまくって。
慣れてるはずのさすがの僕も諦めようかどうか迷った。生まれて初めてのギブアップか?
いや、「ここで諦めたら男がすたる」と頑張って耐え続ける。
頭上をいきがった若者たちが転がっていってもそれでも耐える。
最後の最後まで居続けて無事生還。
頑張った結果、アコースティックセットは前の方で見れてよかったですよ。


編成はフーファイの4人に
キーボード、パーカッション、チェロ&ヴァイオリン、ギターの最大8人。
ギターはなんとパット・スメア!!!
髪が黄色いしもしかしたらと思ってたら、デイヴから紹介があって。
もう感涙ですよ。見れてよかった。見に行ってよかった。生きててよかった。
Nirvana の第4のメンバーと言っても過言ではない、
その歴史を語る上では欠かせない重要人物。
今ここに Nirvana だったメンバーが2人も立ってるのかと思うと泣けてきた。


泣いてばかりもいられない。
惚れ惚れとした気持ちでステージを眺めて、終始ため息が出た。
やっぱデイヴ兄貴だねえ。かっこいいよ。ほんと。
デイヴ・グロールより歌えるシンガーはいくらでもいる。
デイヴ・グロールよりうまいギタリストもまた、いくらでもいる。
だけどギターを手に歌ったとき、その立ち姿が
デイヴ・グロールよりかっこいいロックスター、ヒーローって今他にいないんじゃないか?
あの咆哮、あの笑顔。全てが決まってる。
ステージからはホールの彼方後方まで花道が延びていて、
後ろの場所しか取れなかったファンのためのサービスなのだろう。
この花道をことあるごとにギターを弾きながら突き進んでいった。
こういう気配りも憎い。
最初何曲かやった後のMCが振るってた。
「この中でフジを見たのは何人いる?
 あのときはたった1時間しか演奏できなくて不完全燃焼だった。
 今日、ここでは俺たち Foo Fighters の全てを見せ付けてやる!
 新曲だってたくさんやるからな!!」
会場全体がウオーッ!!となってそんで曲になだれ込むわけですよ。
かっこいいったらありゃしない。


Foo Fighters は今、かつてない充実の時期にいるのかもしれない。
2枚組の大作「In Your Honor」がアコースティックサイドを切り開き、
そのツアーの記録である「Skin and Bones」で歴史を振り返り、
デビュー当初からの突き刺さるようなロックサイドとの融合を果たした
「Echoes, Silence, Patience And Grace」と音楽的な高みへと上り続け、
かつて入れ替わりの激しかったメンバー交代も最近は落ち着いている。
デイヴ・グロール1人のバンドじゃなくて、
4人そろっての Foo Fighters としての存在感を僕はこのステージに感じた。
「無敵」「最強」という言葉が真っ先に思い浮かぶね。
もう何をやってもどっかんどっかんと盛り上がる。
チェロのメンバーが「彼女は日本に来たの初めてなんだ」と言えば
それだけで会場中がウォーッと沸きに沸いてデイヴがさらに煽り、
パーカッションのメンバーが超絶技巧的なトライアングルのソロを披露しては盛り上がる。
デイヴともう1人のギターのクリスが荒野のガンマンのような雰囲気でソロの応酬をしたり。
ずっとアッパーなわけではなく
デイヴがギターを抱えて1人きりで始まった「Everlong」はしんみりときたり。
男の哀愁が出まくっていた。


Foo Fighters のファンとなって日が浅い僕は曲目はあんまりよくわかってない。
聞き覚えがある曲ばかりだったけど、曲とタイトルが結びつかず・・・
セットリストの最初の方は
最新作「Echoes, Silence, Patience And Grace」の冒頭の何曲かだったように思う。
アコースティックセットは「Skin and Bones」「Marigold」「Heroes」をやったかな。
ロックなセットに戻って「Monkey Wrench」があって
アンコールは「Big Me」「Best of You」など。
こうやってみると結構知ってるね。


Foo Fighters 見れてよかった。今が旬。絶対、旬。
2月に見た The policeBjork よりも断然よかった。
デイヴ兄貴には一生ついていきます。


もしかしたら100年後のロックの歴史では
Foo FightersNirvana と並列で、
肩を並べる存在として語られているかもしれない。
カート・コバーン亡き後、残されたメンバーが始めたバンド」ではなくて
あくまでデイヴ・グロールのバンドとして。