駅の前の食堂で朝食。ドライバーの方曰く、ここがドリンスクで最もおいしいと。
鶏肉と卵のスープ(60ルーブル)にする。それとパン一切れ(3ルーブル)。
ドライバーの方が頼んだのを見たらうまそうだったので僕も頼む。
ブリンチキという。クレープのような生地に羊の肉、米、にんじんが入っていた。
これは温かく、スープともども素朴な味でなかなかおいしかった。
(2個で90ルーブル。
僕は1個で十分だったのでイリーナさんと分け合うことにした)
食べ終えて車に乗り、北へ。白鳥の湖と向かう。
ここも宮沢賢治のモチーフとなったという。
見渡す限り緑色、草原の中を走っていく。
海が近付いて小さな村を通り過ぎる。魚の加工品の工場がいくつかある。
裏寂れてひと気があんまりない。
湖は草原の中を漠然と広がる。素通りして、海辺に出たところで車が停まる。
乾いた砂浜、打ち寄せられた老木、目の前にオホーツク海。
灰青色の毅然とした海。穏やかに波が寄せては返す。
ドライバーの方が天然の琥珀の取れる海が近くにあるから
そちらに行ってみるかと聞く。宮沢賢治のあれか。
もちろん僕は行きたいと答える。
車で10分ほど移動する。(南に下ったように思うが方向感覚自信なし)
ここは先ほどと違ってわかめが打ちあがっていて腐りかけているのか
大量の蝿がたかっている。ドライバーの方は砂にめりこんだ石の中に琥珀を探す。
そんな簡単には見つからない。僕はいくつか大理石っぽい見た目の石を拾う。
カモメが飛んでいる。小さな漁船が沖に出る。
船の中に赤い海水がたまって、なぜかその中に大量の魚が。捨てられているのか。
磯辺には小さな貝殻がひしめき合っている。
ここをかつて宮沢賢治が訪れたと思うと不思議な感覚になる。
ここからユジノサハリンスクへと引き返す。
途中の王子製糸工場跡で停めてもらう。
巨大な廃墟があって、行きのときから気になっていた。
煙突が3本。灰色の壁が崩れてかろうじて建物の原型をとどめている。
周りを木々に囲まれ、土に返っていくのを何百年も待っているような。
車が入っていくと中から大きな音がする。まだ稼働中?
ぬかるみの中を車が何台も停まっている。
いくつかの大きな建物の中で何かを稼動させている。
まさか紙を作っているのではないだろう。
最も外側にあった建物はその大半が瓦礫と化していた。
その隣、ひとつ内側の建物は形を保ちつつもその中は何も残されていなかった。
ユジノサハリンスクに戻る。
今日のドライバーの方はアメリカン・ポップスを聴いている。
10:30 終了のはずがあれこれ立ち寄ったため遅れている。
かなりスピードを上げる。隙あらばどんどん追い越していく。
市の中心部に入って、火力発電所なのか
大きなビヤ樽みたいな建物から白い煙が出ていた。
ミーラ大通りに出る。見覚えのある道に出た。
ホテルに戻る。結局30分近くの延長。
ガイドのイリーナさんとはここでお別れ。
明日はドライバーだけが迎えに来るという。
たった3日、数時間ずつとはいえなんだか寂しいものである。
(僕は時々、あのときのガイドの方は今どうしているだろう、
ということを考える)