2014-04-02 「恋人たち」 詩を書く 恋人たちは深い海の底を歩いた 声を交わすことなく、ただその手を握り合って 何万年、何十万年と やがてひとつの生き物となるまで 人類最後の恋人たちが 海の底何万メートルもの呪いをかけられて、希望を託されて、 永遠に醒めることのない夢の中で 降り注ぐ真っ直ぐな重力に晒されながら 見上げると何十億もの人類が住んでいた都市が浮かぶ、漂う 何千もの崩れ落ちた円柱が絡み合って 今もまたひとつの塔が音もなく光のない砂の上に はるか向こう最後の海、月の波間、紫色の夜明け