東海道五十三次を歩く 前篇

東海道五十三次のうち、三島〜富士川間を歩く。だいたい30kmくらい。
この道を参勤交代してたのか。
今は工場裏の風俗とシャッター街外国人労働者と。
…とはいえそれだけではなく。この国はそれだけじゃなく。
歩くのは楽しいですね。風景の移り変わるスピードが心地いい。

    • -

友人が昨年から東海道五十三次を歩いている。
もちろん一気に踏破するのではなく休みの日に少しずつ。
日本橋から初めて毎回20km〜30kmずつ。
僕も歩いてみたい、と思いつつこれまで予定が合わず。
それが昨日ようやく参加することができた。
既に神奈川県を超えて静岡県に入っていた。
東海道本線三島駅から富士川駅というルートだった。


日曜の朝、5:45起き。着替えてすぐ出ていく。
平地を歩いていくので今回は手ぶら。
iPhone と財布と鍵、道中読む本ということで
リチャード・ブローティガンアメリカの鱒釣り』
(これまで読んだことなかったのでした)
長時間歩くのでスニーカーではなくランニングシューズ。
それ以外は普通にジーパンと
BEAMS のシャツ、 montbell のフリース、karrimor のシェルジャケット
という今年よく愛用している組み合わせ。
リュックサックの類は背負っていかない。
長時間歩いていると肩が疲れてやりきれなくなってしまうため。


06:18 東急大井町線自由が丘駅まで。
06:27 東急東横線の急行に乗り換えて横浜まで。
06:54 JR東海道本線で三島まで。08:34着予定。
この東海道本線、4人掛けの席にかろうじてひとつ空席を見つけて座る。
周りの半分ぐらいの人たちが僕らと同じような東海道五十三次ウォークと思われる。
ベストを着て網棚にリュックサックやトレッキングポールを載せている。
隣の四人席の初老の男性たちがまさにそうで、どこそこの道がどうこうと話している。
そこに世話人と思われる女性が時折どこからともなく現れては
何かを伝えたり渡したり徴収していたりしていた。


僕の目の前に座った熟年世代の夫婦はイヤホンを片耳ずつ指して何かを聞いていた。
熱海で下りていく。そのような観光客もまた半分。
それ以外は地元の足として数駅乗って下りていく人たち。
揃いのジャージを着た中学校のテニス部の生徒がガヤガヤと通路に溢れたり。
僕は『アメリカの鱒釣り』を読みつつ、時々ウトウトする。
友人のKさんと何時に到着しますとメッセージをやりとりしていたら
同じ車両に乗っていることがわかり、Kさんはずっと僕の斜め後ろに座っていた。


戸塚、大船、藤沢、平塚と耳慣れた地名を過ぎていく。
根府川で灰色の海が広がった。
熱海の時間の停まったような町並み。
トンネルに入る。


三島でKさんと合流。
JR東海の「TOICA」って SUICA / PASMO と連携していないのか
PASMO で自動改札通れないんですね。
しかし窓口ではピッと当てて支払できる。
そこまでできたらあと少しなんだろうけど。どうなんだろう。
そんなわけで東京方面から来た人たちで窓口に行列ができる。


曇り。雨が降りそう。でもまあなんとかなるかと。
せっかくなので三島大社を見てから行きましょうと提案される。
前回はゴールが三島で19時を過ぎてから到着だったので
来てはみたものの十分に拝観できなかったとのこと。
その前回は箱根の山を歩いて越えるというので
だったら自分も歩いてみたいという人たちが多く10人の参加。
今回は平地でかつ東京からも遠くなって僕とKさんのみ。


昭和と平成があっけらかんと混じり合ったような三島の町を歩いて5分ほど。
三島大社の中へ。池の中に小さな厳島神社。朱塗りの欄干が渡されている。
門をくぐって境内へ。木造なんだけどガラス張りの舞殿が珍しかった。
白いテントをたくさん並べて陶器市が開催されている。
Kさん曰く前回も見かけたとのこと。年中やってるのだろうか。


大通りに戻って東海道五十三次を歩き始める。
いたって普通の国道、商店街の中をスタート。
車の流れも多く、雰囲気は何もない。
「三島コロッケ」の幟をいくつか見かける。
最近力を入れているご当地グルメなのだろうか。
静岡なのでうなぎ屋も多い。


住宅地に入っていく。
しっかりしたつくりの大きな家が多く落ち着いた印象を受ける。
住みやすいところなのだろう。
都会でも田舎でもない市街地が続く。
国道に出るとロードサイドの大型店が建っているような。
何の変哲もない風景。


一時間ほどして沼津市に入る。
国道沿いをそのまま歩くが沼津駅には近づかない。
そのうちに繁華街の端の方をかすめる。
ところどころにここが東海道であることを示す標識が立っていて
道からそれていないことが確認できる。初心者にもわかりやすい。
沼津市中心部には「←本町 沼津宿 横町→」とあった。
僕が小学校か中学校のころ、NHK教育テレビの社会科かなんかの番組の
舞台が沼津だったことを思い出す。東京ではない。
あれは今思うと静岡県マーケティング業界では
平均的な日本のサンプルとして扱われることに関係するんだろうな。


西へ西へと歩くうちに「千本松原通り」を横切り「乗雲寺」というお寺さんに出る。
これが町中にしてはとても立派でよく手入れされた庭園に石庭。御堂も大きく風格がある。
後で調べたら
「晩年を沼津で過ごした若松牧水の墓が境内の片隅にある」とのこと。