「人形」

深い森に閉ざされ、
外界から隔離された村に主人公17歳は迷い込む。
そこには子どもしかいなかった。
最初に道端で出会った子どもは男性と女性、
ふたつの人形を両手に引きずりながら歩き、
立ち止まって話しかけていた。


原因不明の病いにより、ある朝目覚めると
大人たちは一斉に人形へと姿を変えていた。
元に戻る方法はない。
人形は人形、魂は宿していない。
子どもたちは無言で、起きた出来事を受け入れている。
両親から愛されていたある子どもは食卓に人形たちを並べる。
両親から虐待を受けていたある子どもは納屋に火をつけて焼く。


村の中心の小さな家に眠り続けている少女がいる。
この少女の見る夢の中で大人たちが人形となり、それが現実化した。
子どもたちだけではいずれ生活ができなくなる。
主人公は生き残った子どもたちとともに
眠ったままの少女を運んで村を出る。
広場に置かれていた古びたバスを運転して、都会へ。


子どもたちは孤児院へ。
眠り続ける少女は主人公がひとり住むアパートに移す。
その次の日からアパートの周囲の大人たちがやはり人形となっていく。
町は混乱する。大人たちは原因を探り、解決法を探ろうとする。
主人公は少女のことを隠す。引き渡すのは簡単だ。しかしそれはできない。
孤児院に引き取られた子供たちの言動からやがて噂が広がっていく。
主人公にも追っ手が。
少女を背負いアパートを出て、隠れ家へ。


そのうちに少女の見る夢が変容していく。
町は恐ろしい姿に変容し、
大人たちは人形に変わるのではなく直接姿を消すようになる。
そのうちに主人公も18歳を迎え、消滅する。


誰もいなくなった町の中で少女は目を覚ます。