新入社員というもの

昨日は4月最初の営業日。
常駐しているお客さんとこでも入社式が行われた。
この日はエレベーターホールの前のゲートのひとつを
8時から新入社員向け専用にするのだという。


定時を過ぎる。
今日も遅くなることが決まっていて、腹が減る。
家まで待てず、ビルの下の丸亀製麺に食べに行くことにする。
2階のレストランフロアに下りると
地味なリクルートスーツを着た新入社員の女性たちがあちこちにいた。
連れだってはしゃいで外に出ていったり、
おしゃれな店に入ってぎこちなく今日の一日のことを語り合っている。


うどん屋のカウンターに並ぶと前に三人やはり新入社員の男性たち。
ぼそぼそと話し合っていた。
うどんの入った丼を乗せたトレイを手に
トッピングの揚げ物をひとつかふたつ、どれにするか迷っていた。
残酷にも、傲慢にも、こんなことを思う。
初日にして既に格差というものは生まれるんだな。
彼等の食べる横で僕も一人うどんをすする。
無料の天かすとネギをわっさーっと入れて。


僕もたいしたことは言えない。
彼等とほとんど何も変わらなかった。
社会人という新しい人生が始まるということが怖かった。
とてつもなく怖かった。
同期と飲みに行きたいなんてこれっぽっちも思わなかった。
あれはもう18年前のことなのか。
こんなに長いこと働くなんて思いもしなかった。
しかも一つの会社で。


ビルにはいくつか会社が入っているから
必ずしも全ての新入社員グループ同士が同じ会社というわけではない。
もしかしたら目の前のスーツを着た彼らも
就職活動に苦戦している大学生たちだったのかもしれない。
だからといって、何が変わるわけでもない。


4月に入ってコートを脱いだ。
寒いかどうかに関係なく、4月とはそういうものだから。
あの時僕も入社式の日にコートを着ていかなかったのだから。
仕事を終えて21時。
このところ気温が低くて夜は雨も降った。
冷たい風の中を背中を丸めて駅へと向かう。