「ブラッセルズ」にて

「おさんぽ神保町」の取材で
神保町のベルギービールの店に行くというので僕もついていく。
古書店の店長と共に酒場を訪れるという連載の企画。


向かうのは「ブラッセルズ 神田店」
讃岐うどんの名店「丸香」の隣。
狭い細長い店内は三階建て。
その三階で飲みながらけやき書店の佐古田さんに話を聞く。
神保町の歴史について貴重な話をたくさん伺った。
(その辺りは妻が「おさんぽ神保町」の記事にするでしょう)


僕が興味深く思ったのは「ブラッセルズ」の成り立ち。
この店舗は今から100年前に創業した国産スキーの老舗「芳賀スキー」の倉庫だったのだという。
一頃はスキー人気の高まりとともに発展したスキー産業もバブル崩壊と共に国産メーカーの多くが倒産。
芳賀スキーそのものもなくなってしまう。
しかし二代目はスキーは手掛けず、海外のアーティストを招聘する仕事に。
「カンバセーション」という会社を立ち上げる。
ヨーロッパの音楽、アートの中心のひとつがベルギーということで訪れた時に
ベルギービールと出会ったという。
発酵してから瓶に詰める日本・ドイツ式とは異なって、
瓶に詰めてから発酵されるベルギービールのそれまで知らなかった味わいに
ぜひこれを日本に紹介したいと。
使っていなかった倉庫を改装して店にする。
最初の店長はベルギー人で外国人の客が多かったという。
二代目の芳賀さんはオーナーとして、これはと思ったベルギービール仕入れてくる。
ベルギービールの代表とされるデュポン醸造所のビールは最初はなかなかうんと言ってくれず、
2年がかりで交渉したと。


あれこれ興味深いお話の後でトイレに行ったら雑誌の記事の切り抜きが。
先ほどお聞きしたことの多くが書いてあって、読んでいたら
その「カンバセーション」はベルギーのレーベル「クレプスキュール」の日本での販売代理権を持っていて…、と。
え? そうだったんだ。
Antena や Anna Domino そして、Tuxedomooon …
80年代の室内楽ニューウェーブの繊細で耽美的な音を担った。
ブリュッセルより愛を込めて』といった秀逸なコンピも出していた。
僕は Tuxedomoon のアルバム未収録の楽曲が欲しくて買いあさった。
後にクレプスキュールの音源は「At Twilight」という編集盤にまとめられましたが…
「crepusucule」というのがそもそも、「Twilight」つまり黄昏のこと。


でも、真夏のビールの店の BGM にクレプスキュールは合わないかな。
僕らが行ったとき、店の中には The Bangles のベストが流れていた。