そのシングル『優しいあの子』が発売された。
いつも通りのスピッツ。
心の中にあるイメージ通りのスピッツ。
それを寸分たがわず差し出せるというのは簡単なようでいて、かなり難しい。
朝ドラ効果で久しぶりに聞きたくなって、
『Crispy!』から『フェイクファー』までのアルバムを iPhone に入れ直して、
B面集『花鳥風月』『色色衣』も追加した。
どの曲を聞いても同じ、どのアルバムを聞いても同じ。
「スピッツらしい曲」だけがそこにある。
あの声と、浮遊感のある手触りのいいギターロックと、
意味ありげで結局よくわからない抽象的な歌詞と。
同じひとつのラーメンだけで30年間やってます、というラーメン屋みたいなもの。
ずっと同じレシピで、同じ材料で毎日機械のようにつくるというのではなく、
季節によって少しずつダシの入れ方や調味料の量を微調整するというような。
その匙加減が絶妙なのだろう。
B面集だからクオリティが若干下がる、ということもない。
どの曲がシングルになってもおかしくはない。
ただ、やはりシングルになった曲はどこかひとつ突き抜けている。
「空も飛べるはず」であるとか、「ロビンソン」であるとか、「チェリー」であるとか。
美大出身ということでジャケットのアートワークが
ひねってるけど美しいというのも魅力のひとつか。
その季節の透明感をそのまま差し出すというか、
そこに映る女の子はどこか不思議なところを残しているとか。
それって歌詞の雰囲気にも言えることだと思う。
メンバーチェンジ無し、不動の4人で今も続いている。
コンスタントに作品を発表して活動休止の時期もなかった。
これもまた稀有なことだ。
いい意味でのつかみどころのなさ、に僕らには見えるもの、がポイントなのだろうか。
脱退することがない、どころか怪我や病気もない。
4人は妖精なんじゃないか、とすら思う。
あと10年20年、こんな感じで続くのか。
終わりの日をどんなふうにして迎えるのか、想像もつかない。