水平方向のエレベーター

エレベーターが垂直ではなく、水平方向に発展した社会というものを想像する。
A地点からB地点までのまっすぐなシャフトが地上や地下に張り巡らされ、乗客が乗り降りする。
必然的に都市は碁盤の目のようになる。
具体的にはビルとビルの間を結ぶ、という感じか。
あるいは巨大なビルの中であるとか。
中東・アジアの急成長する都市のオフィスビルとかそういうのあってもよさそうだけど。
一方向にのみ敷設するならいいけど、縦横に交差するとなると
縦ラインが停止しているところにもう一台が横ラインから来たりして待ったりするのがやっかいか。
 
その代わりに鉄道やモノレールの類は発展しない。
というか、発明されなかった、という世界を考えてみる。
エレベーターが考案され、実用化されたときに
これだ! これは水平方向も行けるのでは、と考えた人が20世紀の初めにいて、
しかもかなりの権力者、ないしは、大富豪だったりしたら。
シムシティのように自分の支配する町をつくり、そこに水平エレベーターを敷設する。
それを見た世界中の人が真似る。
 
やがて都市の中だけではなく、都市と都市の間をつなげないかと考えることになる。
シャフトの延長工事を続け、数年の後に完成する。
途中で曲がってはいけないし、傾斜があってもいけない。
果てしなく続く一本道となる。
成功の暁には海底にも敷設できないか、という話にまで広がる。
 
エレベーターは基本小さな空間であるため大量の人員を一度に運ぶことができない。
よって一本のシャフトの中を一台のみ行き来するのではなく、複数台が常に移動することになる。
そうなると一本の中で行ったり来たりの往復はできなくて、
上り方向でシャフトが一本、下り方向でシャフトが一本となり並行することになる。
この間をゆるやかなカーブでつなぐ。
Uの字型とそれをひっくり返したのがつながって、陸上競技場のトラックのような形になる。
この間をぐるぐると回る。
(そうなると前後から引っ張って動かすのが無理となってリニアモーターカーの原理を応用。
 この際、鉄道が発達しなかったことは置いておく)
 
そのうちにこれら個別に動かすのではなく全部連結したらいいのではないか、というアイデアが出てくる。
しかも空間としても区切らずに一連なりとする。通路そのものが循環するというような。
急ぐならばその中を歩いて行ってもいいし、目的の個所に差し掛かるのを待っていてもいい。
 
となると、最終形態はどうなるか。
複雑化したものは極めると単純化を求める。
そもそも屋根や壁は不要ではないか。通路の床そのものが動けばよいのではないか。
その方が乗り降りの自由度が増す。
ということで「動く歩道」が発明されるだろう。
屋外ならば屋根付きの。
 
話変わって。
エスカレーターと動く歩道を組み合わせて巨大な建物というか迷路の中を縦横無尽に進んでいく、
ドミノ倒しのドミノになったかのような感覚を体験できるアトラクションがあったら面白そうだな、と思う。
ジェットコースターのようなスリルは求めず、風景が変わっていくような。
走ったら危険じゃないかといった安全性の問題があるので、
椅子に座ってベルトで固定して、となると興ざめだけど。