小田原へ 後編

小田原城を見終えて13時近く。
昼を食べようと駅前に移動する。
その前に、かつての三の丸の辺りを歩く。
市民会館の裏に鐘付台の櫓があった。
晦日には除夜の鐘になるのだろうか。
天井には様々な札が貼られていた。
 
商店街に入る。
串カツ田中ゴーゴーカレーといったチェーン店の合間に
ちらほらと蒲鉾、干物の店がある。
駅前に固まって並んでいて、そのうちのひとつ、有名な鈴廣に入って
夜の晩食で食べる蒲鉾の詰め合わせを買った。
地下街に入ると蒲鉾、干物など名産品を売る店があって、
広場は天守閣前で行われていた梅酒祭りの会場のひとつとなっていた。
 
商店街に戻って寿司屋のひとつに入った。
小田原おでんと握り寿司と。
おでんはもちろん小田原の蒲鉾で、かつお出汁の優しい味。
梅味噌をつけて食べる。
寿司は鯵に生シラスにトロ、ハモなど。
わさびの焼酎を飲んだ。
 
店を出て3時近く。日が暮れ始めていて、帰る前にもう一か所、
ガイドのTさんがお勧めしていた石垣山の一夜城が近くだというので行ってみることにする。
豊臣秀吉小田原征伐を行うにあたって本陣とするために一夜で築いたとされるが、
実際には数年かけて築城したという。
完成した後で城の前の木々を切り倒して、一夜にして現れたかのように演出した。
しかしその間、北条氏は全く気付かなかったのだろうか……
相当な物流が動いていたはずで、気付かないはずはないのだが。
双方密偵を抱えていたと思うし。
 
山城なので右に左にうねる急な坂道を車は上っていく。
トレッキングコースになっていて、途中途中で小田原征伐で活躍した武将のパネルが貼ってある。
駐車場に停めると、なぜか鎧塚氏の店が。こんな山奥でお客さんは来るのだろうか……
しかし高いところにあって眺めがよく、海が広がる。
都会の喧騒を離れたこういうところもありかな。
 
城跡を見に行く。
ここは百名城というわけではなく、石垣が残っているだけ。
二の丸跡の草原。坂道を少し上って林の中へ。本丸跡が見晴らし台となっている。
遠くに見えるのは三浦半島か。市街地の中に小田原城。案外近い。
豊臣秀吉はここから見下ろして形勢を判断したのか。
北条氏の武将たちが城の守りを固めたとしても一望できる。
いいところに城をつくったなと思う。
 
車に戻る。日も暮れて16時近く。
高速も下道も混むだろうし、箱根の温泉は諦めて家に帰ることにする。
高台を下りて高速の入り口を探す。
途中「山安」という大きな干物の店を見つけて、気になって入ってみた。
敷地内に大きな建物を建てていた。ここがやがて新しい店舗となるのか。
駐車場にはマイクロバスが停まっていた。
今の店舗の入り口の前に試食コーナーがあって、七輪が二台。
先客たちが取り囲んでいた。
金属の箸と、干物が入ったケース。
僕らの側は鯖を醤油につけて干したもので、もう片方は金目鯛だった。
空きを見つけて僕らも網の上で焼いてみる。香ばしい香りがする。
 
隣に立っていた方が話しかけてくる。僕よりも少し年上の男性。
この近くに住んでいるようで、よく利用する。
試食用の干物がいくらでも出てきていつまでも食べ続けられると。
大きな店ができると観光地化してしまうんじゃないか、
今の小さな店のままでいいのになとも言っていた。それ、よくわかる。
店員が出てきて鯖のたくさん詰まったケースに交換し、隣のはほっけに。
確かに惜しげもなく、気前がいい。
僕らもほっけを追加して焼いた。時間がかかるのでじっくり待つ。
道路を挟んで向こう側に湘南ゴールドやレモンを売っている店があって、妻が買いに行く。
農家によっては以前からオーナー制度を運営していて、昔は1本の木が年間3,000円だったという。
それが収穫し放題。今は人気が出て1万や2万はすると。
 
焼きあがった鯖とほっけを食べる。日本酒が欲しくなる。
次回はワンカップ大関をこっそりもちこんで食べたいなあ……
こんなにおいしいのならばと買わずにはいられなくなる。
僕らも店の中に入って鯖に鯵に、アジフライ、イカの一夜干し、隣の方にお勧めされたイカゲソ……
中型の発泡スチロール一箱分買い込んでしまった。それでも3,000円ちょっと。安い。
僕ら素人にはわからない傷物は投げ売り。
この近くに住んでいる方は小さめの発泡スチロールを持参していた。
今度箱根に来た時も帰りにここ寄ろうと決める。
こんなときめく試食、他にない。
というかこんなにおいしい干物、生まれて初めてだ。
 
高速に乗って帰る。
途中までは順調だったが、海老名から横浜町田まで事故渋滞が10km続いているという。
こんなに空いてるのに、ほんとかなと思っていたら目端の効く人たちが行列になって手前の出口で下りていく。
確かに海老名に近づいた途端車がほとんど進まなくなった。
空も暗くなってノロノロノロノロとぐったり疲れきる。
ようやくたどり着いたサービスエリアで休憩する。
駐車場から出るのにまた一苦労する。
どうせ止まってるならばとカーナビをテレビにする。
亡くなられた野村克也監督について。
サンドイッチマンの病院ラジオの再放送。
その後フジファブリックの若くして亡くなったヴォーカル、ギターの志村正彦についてのドキュメンタリー。
地元でバンドを組んでいたかつてのメンバーやその言葉に勇気づけられたというファンと。
事故地点に到達する。事故車は一台レッカー移動されたのか、後ろから追突されたと思われる車一台のみ。
通り過ぎたら急に渋滞が解消された。
そこから先は環八も混まずに家まですぐだった。
結果、18時到着予定だったのが19時半。
サービスエリアでの休憩が30分だったとして、思っていたよりも渋滞に巻き込まれなかったのか。
 
風呂を沸かして入り、買ってきた干物のイカを焼いて食べる。
しっとりふっくら、柔らかい。
干物というか固くてボソボソしたのを想像していたら全然違った。
酒が進む。買ってきた湘南ゴールド、レモン、ゆずでサワーをつくった。
鈴廣のかまぼこも負けず劣らずおいしかったな。
 
一日遊んでくたくた。
病院ラジオの新作を見て寝る。
今回のテーマは依存症だった。アルコールやゲームなど。