サボる極意

 

気が付いたら大学を出て20年以上サラリーマンとして働いてきた。
こんなに長く続くとは……、思ってもみなかった。
その最大の秘訣は適度にサボってきたからだろう。
真面目にがむしゃらに働いていたら10年も持たなかった。
余裕をどこかにつくるから、だましだまし続けることができた。
 
働くとはサボること。
その僕なりの極意、その五カ条を残しておこう。
 
「サボるときは堂々とサボるべし」
コソコソしてはいけない。
不審に思われてその場で声をかけられたり、後で問い詰められたら全て台無しになる。
うしろめたい気持ちになる必要もない。
あくまで自分にとってその時自然なことを自然に行うだけなのである。
 
「周囲に迷惑をかけるべからず」
サボるとはものすごく差し迫っている目の前の仕事を投げ出すことではない。
しばらく自分がいなくなっても誰も困らない。
そういう状況をつくり出すのが最初の一歩である。
それができるようになって初めて、いつでも好きなときに抜け出せるようになる。
 
「サボってる自分に酔うべからず」
サボった時間のことは自分一人の内に秘めて一切を語らないこと。
悪ぶって周りの同僚に自慢するなどもってのほか。
こんなの見つけたとスマホで写真を撮るのはいいが、SNSに投稿するのはいけない。
サボった痕跡は残さないのが大人のマナーである。
 
「サボるときは一人でサボるべし」
他人を巻き込んではならない。
同僚や後輩を誘って楽しい時間を過ごそうなどとはゆめゆめ思ってはならない。
古びた喫茶店に一人座り背中で哀感を表すもよし、気楽に散歩するもよし。
一人の時間を充実させることこそがサボる、なのである。
 
「行きつけの場所をつくるべからず」
ここは意見の分かれるところかもしれない。
いつもの時間にいつもの場所(例:デパートの屋上のベンチ)に行くようになると
それはそれでタダのルーチンワークになってしまう。特にそれが逃避のためだと空しい。
「今、サボれるな」という機を、偶然性を、捉える自由さこそがサボる楽しさなのだと思う。