僕らが小学生だった頃はプロレス全盛期だった。
掃除の時間になって机を教室の後ろに寄せると技を掛け合ったり。
スタン・ハンセンとか名レスラーの偉人伝みたいな漫画を
誰かしらが持っていて借りて読んだり。
昨晩はその後、人志松本のつまみになる話。
長州力が出て、アンドレ・ザ・ジャイアントの逸話で笑いをとった。
忘れられない思い出がある。
小さい頃、青森市の本町という港に近い飲み屋街のアパートに住んでいた。
ある冬の日、幼稚園に行くため外に出ると
通りの向かい側を少し行ったところにあるビジネスホテルの入り口で騒ぎが起きていた。
見ると巨人のように大きな男がチェーンを雪の積もった地面に叩きつけて
何やら大声で叫んでいた。顔を真っ赤にして怒っていた。
幼稚園児でそこまでプロレスに詳しくのない僕でも
さすがにアンドレ・ザ・ジャイアントというキャラクターはわかる。
おいそれとは近づけず、その日は恐らく遠回りしたのだろう。
いやー怖いという以前にびっくりした。
もしかしたらあれが初めて外国人というものを間近で目撃した瞬間かもしれない。
しかし、アンドレ・ザ・ジャイアントは何に怒っていたのか?
昨晩試合があって負けたのだろうか。
酒豪としても有名だったため、朝まで飲み続けていたのだろうか。
プロレス界のスーパースターを窮屈なビジネスホテルに泊めたことが噴飯ものだったのか。
そもそも「聞いてないよ」と言いたくなるぐらい、青森の冬が寒かったのか。
アンドレ・ザ・ジャイアントにばかり目が言ってたけど、
もしかしたらなだめるために日本人レスラーたちもその場にはいたのかもしれない。
さすがにアントニオ猪木がそこにいることはないだろうが、
キラー・カーン辺りとか。
あの後どうなったんだろうなあ。
なだめになだめまくってあの巨体をワゴン車に押し込めて青森駅まで行って
青函連絡船で函館に渡ってまた次の試合会場へ。
という興行だったんじゃないかな。
昭和50年代の半ばごろの話。