ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』を少しずつ読んでいる。
冒頭の短編がコインランドリーを舞台にしていた。
町の貧しき人たちの住むエリアの、貧しき人たちの集まるコインランドリー。
アルコールに溺れていて、仕事という仕事もなくて。
幸か不幸か、コインランドリーというものを利用したことがない。
上京して大学の寮には洗濯機があったし、
初めて一人暮らしした時もたまたま友人が譲ってくれた。
その洗濯機を独身時代もずっと使い続けて20年にはなっただろうか。
ボロボロだったのに動かなくなることはなかった。
調子が悪い、ということもなかった。
日本の家電はすごいなと今更ながらにして思う。
足を踏み入れたのは1回だけ。
学生時代、後輩が撮影した映画の中で
コインランドリーのシーンがあった。
交渉して借り切ったわけではなく、あくまでゲリラ。
部員たちに協力してもらって服をかき集め、
全ての洗濯機・乾燥機を回す。
色とりどりの服が回っていた。
(ちなみにその作品は『ぴあフィルムフェスティバル』で入選した)
東京はアパートが多いからか、あちこちでコインランドリーを見かける。
銭湯の脇にある昔ながらのものもあれば、新しくできたきれいたものもある。
いつも誰かしらが利用している。
車から降りてきてパンパンに詰めた袋を両腕に下げて入っていくとか。
洗濯機のない家が案外多いのだな、と思う。
だからと言ってその人たちが貧しいかというとそんなふうには見えない。
いろんな家があって、いろんな状況がある。
NHK のニュース番組をなんとなくつけたときに、
最近のコインランドリーはこんなに進化しているというのを見かけることがある。
カフェが併設していてコーヒーを飲みながら、
本を読んでくつろぎながら仕上がりを待つことができるとか。
クリーニング屋と一緒になっていて染み抜きのプロがいるとか。
雨の降る日、コインロッカーで待っている間に若い男女の出会いが、
なんていう小説や映画もいくつかあった。
ほんとにそういうことがあるのかは謎だけど。
あるところにはあるのだろう……
そういえば。
防犯意識の低い時代だったので大学の寮は出入り自由だった。
近所に住む見知らぬ人が勝手に洗濯機を使ってる、すれ違う、なんてことが結構あった。
気持ちのいいものじゃないけど、空いてるんだし、ま、いいか。
そんな感じだった。
おおらかというか、お人よしというか。