軌跡

皆同じ一点に生れ落ちて、
一人一人が成長を続け、それぞれの方向へ向かう。
それぞれのスピードでてんでばらばらの方向へ向かう。
ある人は誰も行ったことのないようなとてつもなく遠くへまっすぐに進み続けるし、
同じところをぐるぐると回る人もいれば、行ったり来たりを繰り返す人もいる。
きれいな軌道を描いていたのに、あるときからよじれてしまう人もいるだろう。
そういうのが最近の僕の人生のイメージで、
その時々の人々の位置を線で結んでいった軌跡が世界というものになり、
その積み重ねが歴史というものになるのだと思う。
その人自身の時系列による軌跡と、人々の瞬間の立ち位置を結んだ軌跡とがある。
 
小学校、中学校、高校と同じレールの上を皆一つの方向に進んでいるように見えて、
それは一つの見方でしかない。
その時ですらそれぞれが違う方向に向かっている。
何に興味を持つのか。スポーツなのか本なのか、どっちもなのか。
家庭環境が足を引っ張るもの、後押しするもの。
同じ小学校に通っていたのに、
引っ越し・転向するというので文字通り物理的に距離が生まれるということもあるだろう。
それぞれの人生がどんどんかけ離れていく。
 
そしてその時々でぶつかり合って、出会う、ということもあるだろう。
お互いまったく別の方向から来て、本来交差する可能性は低かったのに交差する。
それが友達となったり、恋人となったりする。
性格は正反対なのに生まれ育った境遇も違うのに
周りにめったにいない趣味の一点で一致するとか。
その逆とか。
 
その時々の人々の位置を線で結んでいった軌跡、と書いたが、
その軌跡を遠くから俯瞰したときになんであれ美しいと感じる人もいれば
ごちゃごちゃしていて見知らぬ人のことなど知りたくもないという人もいるだろう。
 
一番遠くまで行った人が、それまで誰も知らなかった方向性を見つけた人が、
この世界を広げる。
周りに誰もいなくて心細く思うこともあるだろう。
しかしそんな思いを振り捨ててさらに遠くへとひた走る。
そういう人が歴史を導いていく。