寒い日、暑い日

先日神保町PASSAGEの棚で買った椎名誠『零下59度の旅』という文庫を読んだ。
1984年冬と1985年の夏、北島シベリアのヤクーツクを訪れたときの写真と文章。
(写真の撮り方にもよるんだろうけど)
灰色の町、灰色の森。人は皆影のように黒い。
吹雪の町、吹雪の空。しかし人々の顔は暗くない。
零下40℃、50℃の極寒の地でも馬が生命力たくましく雪の間を歩いている。
家と雪道があるだけの町並み。買い物帰りの親子。
日本が昭和だとシベリアの風景も昭和に見えるのはなぜなんだろう。
 
零下40℃、50℃だと吐く息ですら凍る。
そんなの雪深い青森でも体験はなく、想像つかない。
北海道よりは寒くないんですよね。
最低気温-4℃で、最高気温ー3℃の日が一週間続くとか。
そんな感じ。旭川のように―20℃まで下がるということはない。
(ちなみに今調べたら、旭川の最低気温の記録は明治35年のー41℃)
 
自分にとって一番寒かった時の記憶っていつのどこだろう?
と思うが、全く思い出せない。わからない。
毎日寒い中で「この日が人生で一番寒い」なんてイチイチ思うことはないのだろう。
あのときの寒気は辛かった、というのはあっても。
 
逆に「あの日は暑かったなあ」という記憶はいくつかある。
汗だくで、真夏の日差しにさらされて、逃げ場がなくて。
これは僕が北国育ちだからだと思う。
南国育ちだったら、「あの日は寒かったなあ」という日の方を覚えていると思う。
 
そう思うと僕は圧倒的な寒さに晒されることなく生きてきた。
吹雪の冬山を登って凍えたとか、
山小屋に入ってストーブに当たったら生き返る思いをしたとか、そういう経験はない。
幸か不幸か。
 
雪山で遭難死するときの寒さってどれぐらいなんだろうと思う。
想像もつかない。