その後で僕たちはダイスケを埋めた。
後ろのドアを開けてダイスケの体を引きずり出すと、4人で持ち上げて運んだ。
ブーツがいつもよりも重く雪の中にめり込んで鈍い音をたてた。
僕の両手の中にはうつぶせになったダイスケの左腕があった。
肩の近くを掴んで、無理やり引きずるように運んだ。
ダイスケそのものは軽くて、その体は折れそうなぐらいに痩せ細っていたのに、
ダウンジャケットや何重にも着込んだシャツが鉛のような物体に仕立て上げていた。
どれぐらい運んだだろう。
たいした距離ではないはずなのにやけに遠く感じられた。
波打ち際のすぐ近くまで来ると誰かが歩くスピードを徐々に落として、やがて立ち止まった。
それまで疲れきって惰性で動いていた4人の歩調が崩れて、ダイスケの体が大きく揺れた。
そっと下ろしたかったのだが、放り投げる形になった。
仰向けにひっくり返した。
ヨウコがダイスケの顔についた雪をそっと振り払った。泣きそうな顔になっていた。
振り向くと少し離れた場所に立っていたミユキの方がもっと泣きそうになっていた。
顔をがくっと落とすと泣きじゃくった。両手で顔を覆って、声張り上げて泣いた。
ヨウコもうずくまったまま泣き出した。
僕はその場に突っ立ったままうつむいて、気がつくと足元の雪の塊を眺めていた。
リョウジは凍りついた海辺に一人きり立っていた。
ジープの中からスコップを運んでくると、雪とその下の砂浜を掘り返した。
僕とリョウジが交代で穴を大きくしていった。
無言でスコップを渡しあった。
マイナスに下がった気温のせいなのだろうか、砂は土のように固かった。
湿り気を帯びた冷たい砂は普通の砂よりはるかに重たかった。
平べったくて細長い穴が出来上がった。
ダイスケの体を4人でそっと持ち上げると穴の底に横たわらせた。
静かだった。
雲の隙間から漏れる太陽の光が辺りをぼんやりとした明るさで包み込んでいた。
弱い光の当たったダイスケの顔は真っ白で、
伸びきった黒い髭はなんだか別な生き物の死骸のようだった。
唇の端が切れていた。
唇もその周りの皮膚も乾いたボロ切れのようだった。
ヨウコはどこから見つけてきたのか造化のカーネーションを胸の上に置いた。
缶詰めをいくつかと缶ビールを足元に添えた。
少しずつ砂を戻していって、彼がつけていた日記帳とスケッチブックをその中へ放り込んだ。