時間を止める能力

時間を止める術を授かった。
ただし、困ったことに僕に可能なのは止めることだけであって、再開する方法はわからない。
それが10秒後なのか1週間後なのか、
いつどんなふうにして時間というものが再び流れ出すのか、その時になってみないとわからない。
不便といえば不便だ。
時間を止めて、高価な物品を窃盗しようとしているときや女性に性的ないたずらをしているとき、
その真っ最中にひょいと再開しだしたらたまったもんじゃない。
理屈はどうあれ、僕は現行犯逮捕だろう。
もっと月並みな行為。例えば、「歩く」
そもそも街を歩いているときにいきなり僕が目の前に現れたとしたらそれは非常に不自然な状態だ。
なので静止した人たちの間を動き回ることもためらわれる。
再開した瞬間にまた止めればいいんだろうけど、
時間を止めるなんてこと、そうそう簡単にできるものではない。


結局は当り障りのないことにしか使うことができない。1人きりの場所にいることが必須。
締め切りが迫っているのにその品質に納得の出来ていない仕事をしているときとか、
あるいは自分に休暇を与えたくなったときか。
休暇と言ってもテレビやラジオのない山奥の山荘に閉じこもるわけにもいかない。
すぐ近くに人が生活している気配がないと
僕の寝ている間に世界がまた動き出しても気が付かなかったりする。
時計の電池が切れていたりするとこの世界が止まってるのか動いてるのかがわからない。
気がつかないままでいたら会社を何日も無断欠勤してしまう。


僕がこの能力に目覚めた時、
そう、あの時、青白い小さな彗星のようなものが僕の頭上に現れ、
しばらくの間留まり、そして僕の中に入り込んだ。
夢でも見ていたのかもしれない。
だけど、時間を止めるなんていう力が事実としてあるのだから、夢の一言で片付けるわけにもいかない。

    • -

という出だしで、その後の展開。


家の中に閉じこもっているわけにもいかず
「僕」が静止した街を歩いていると、同じように止まってしまった時間の中を動いている人間を見つける。
共に驚く。「あなたも、止められるんですか?」というような会話を交わす。


2人は旅に出る。
この能力がいったい何のために与えられたものなのか、探るために。
そのもう1人の人物は少年でもいいし、老人でもいいし、うら若き乙女でもいい。


やがて、1人、また1人と仲間が見つかる。


集団が形成される。・・・だけど彼等の集団としての目的、存在意義はどうしたらいいだろう?

    • -

時間が止まっているため、テレビもラジオも放送が止まってしまっている。
テレビは画像が静止しているのだろうか。それとも、俗に言う砂嵐の状態になるのだろうか。
音楽は、たった1つの音が無限大に引き伸ばされて鳴り続けている。


はるかかなた上空で飛行機が静止している。


時間の止まっている間に
主人公がCDプレーヤーのボタンを押すと音楽が流れ出すというのはありだろうか?
そもそも水道の蛇口をひねると水が出るのだろうか?


インターネットは使えるのか。電気はどうなる?


時間だけではなく、全てが停止した世界となるのではないか。

    • -

時間が止まっている時にたまたま、自殺しようとしている人や殺人を犯そうとしている人を見つける。
主人公はこれをどうするべきか。やめさせる?
でもたった1人でも救ってしまったならば、
彼の存在意義はそういう危機的状況に陥った人を探して、救助することになってしまうのではないか。
だけどこの場合、何もかもが静止しているならば危機的状況を判別することは大変難しい。
口論をしていて、1分後にカッとなって絞め殺したとしても分からないわけだ。
止まっている間は2人の人間が言い争いをしている様子が凍りついているものとしてしか認識できない。
崖の上のガードレールを車が飛び出しているような見た目にわかりやすいものでないとどうにもならない。

    • -

普通の時計は止まっているのに、
「時間静止者」(今思いついた造語)がその行為に及んだ時にも時の流れを計測できる
そんな特殊な時計が研究所にて発明される。

    • -

時を計る。「時計」と書いて「とけい」と読む。
なぜ、「じけい」ではないのだろう。何も考えず音読みしたらそうなる。
誰が「とけい」と呼び出したのだろう。
最初は何て呼ばれていたのだろう。
音に漢字を当てはめたのか、中国から単語が先に伝わってきたのか。
ちょっと待て。日本に時計がもたらされたのはいつのことなのか。
江戸時代にオランダから?
つうか、時計の発明っていつ?
18世紀・19世紀のようでもあるし、もっともっと前のことのような気もする。
歯車を用いるものじゃなくて
水時計のようなものなら紀元前にもギリシャにあったんだっけ?
地面に線を引いて影の長さを計るとか。

    • -

タイムマシンに乗って過去に遡る。


100年前に移動して1日を過ごした。
このための移動時間に行きと帰りで前後1時間ずつ必要とした。


100年前の1日がどういう扱いになるのかはなんとなくわかるけど、
移動に際して要した1時間ってのはどこに消えてしまうのだろう?
現実の時間軸ではどこにマッピングされるものなのだろう?


移動時間なんてものは必要なくて、瞬時にその時代・その時間に移動できるようになるのか。

    • -

時間を止め続けていた結果、主人公は周りの人間たちよりも早く年老いてしまう。


時間が止まっている間に、彼は死を迎える。