エイプリルフールその2

実は僕、神様だったりする。
この世界を作ったのは僕だ。というかこんなふうなのは僕が望んだからだ。
あなたも、そこのあなたも、僕が作った。
実際には手を動かしてないけど、計画としてはそうだ。
あちこちほころびているけど、今のところどうにかこうにかうまくいっている。
まだこの地球は回転している。


そう、地球。
僕が中途半端な思いつきでこの世界を作ってしまったもんだから、
例えば僕らがいるこの地球って星は
永遠に回り続けなくてはならないものになってしまった。
これがまたかなりめんどくさい。
公転であれ自転であれどっちも止めちゃならなくて、いつも気にかけている必要がある。
寝る前に目覚まし時計をセットするように、「あ、明日も地球を回さなきゃ」と。
忘れたら大変なことになる。
でもやっぱ、時々はそういうこともあって、忘れたときには時間を戻すようにしている。
例えば、今日朝7時に僕が起きて地球が回っていなかったら、
その7時までの時間をなかったことにして巻き戻す。
午前0時からやり直して僕はまた布団に入る。そんで二度寝する。


宇宙もねえ、書割なんですよね。
地球と月と、よくて火星まで。そこまで。人類が行けるようにしたのは。
太陽なんてのも実は存在してなくて。
巨大なライトを適当な位置に置いてるだけ。
人類がお人好しでよかった。まじで。
勝手に自分たちで科学だの理論だの作ってれば喜んでるんだもん。
それでもほっといてていいわけなくて。
時々彗星がどっかからか近づいてきたり、
ブラックホールなるものをこしらえて謎めいた電波を出したり。
あれこれボロが出ないようにするのは大変。
こんなことなら、海と陸地とがあって原始的な生命が漂ってた、
あのままにしておけばよかった。


でも僕、寂しがり屋だから。
話し相手が欲しかったんだよね。
最初にアダムってのを作ってみたんだけどさ、やっぱ彼も寂しくなったじゃん?
それと一緒。
あとさ、今例えば50億の人間がこの地球にいるとして、
その50億全部を作ったわけじゃないからさ、僕が。
魔法の杖をエイって振っただけ。心の中で。そこから先は全自動。
だから、言うこと聞いてくれないんだよね。誰一人として。
「あ、この子いいなあ」と思っても
その子が僕のこと気に入ってくれることなんて全くない。これまで一度もなかった。
かといって、「僕神様だからさ」と言うわけにもいかないし。
そんなわけで電車に乗ってたら酔っ払いが僕の足を踏んだりするわけよ。


おかしいよなあ。
やり直そうかなあ。全部。
全員消しちゃって。地球とかなくして。
真っ黒な宇宙、いやその前の透明な無の状態からやり直す。
そうだ。そうしよ。
思い立ったらすぐ行動しないと。
まずは明日、地球の自転を止める。
太陽の電源をオフにする。


今度は僕、女の子と二人だけの世界を作るよ。
そんで後はビーチで寝っ転がって
夜はバドワイザーを飲んでればそれでいいような、そんな世界にするよ。